ぴらりと目の前に出された薄い紙には六道骸、と名前が書かれてあった。

その横の妻になる人、と書かれた欄が空白で、そこに名前を書けという。

こういう冗談は他所でやってくださいませんかと丁寧にお断りすると
至って真面目に申し上げてますがとやっぱり丁寧に返ってきた。

君が生まれた今日という記念すべき日を結婚記念日にしましょう。と、至極真摯な表情でもう一度言われる。


これはもしかしなくてもプロポーズだろう。


いやいやそもそもお前戸籍あんの?戸籍ないと無理だからな?
って言うか俺ら別に付き合ったりもしてないよね?
いやいやその前に男同士だよな?
ああ母さんこんなに簡単に署名捺印しちゃダメだよ新手の詐欺だったらどうすんの


思い付く限りの文句を並べてほとんど独り言のように言い続けると、
不意に骸が両手を机に大きく置いた。

「聞きなさい、沢田綱吉・・・!」

あまりの剣幕さに目を見張って
珍しく焦燥感なんて滲ませているものだから、綱吉は無意識にごくりと喉を鳴らした。

骸がこれほどまでに切迫しているというのなら
このふざけたプロポーズごっこに何か重大な意味でもあるのではないかと息を飲む。


骸は酷く切迫した表情で、少しばかり泣き出しそうな顔で、その薄い唇を動かした。


綱吉は無意識に息を止めた。



「君がいると、僕が幸せになります。」



ぽかんと口を開けてしまった15歳の誕生日からはや10年。



毎年骸は誕生日になると、綱吉が行きたいところに連れて行ってくれる。

綱吉の望むところならどこへでも、何て贅沢な誕生日プレゼント。


学生の時は自転車で、今は真白い車に乗って。


オープンカーの白い車は座席までハンドルまで白くって
白い花で埋め尽くされた車内はまるでチャペルのようだった。

だから何の気なしに結婚式みたいだね、と言うと
ハンドルを握っている骸が思った以上に照れて頬を赤くするものだから
綱吉まで恥ずかしくなって俯いた。


ハンドルを切ると、花びらが舞っていく。


骸は改まって口を開いた。

「誕生日おめでとう、綱吉。君が生まれてきてくれて本当によかった。
綱吉のおかげで今年も僕はとても幸せでした。」

しあわせならいつもいつも貰ってる。

「俺もだよ。ありがとう、骸。」

赤信号で止まった時に、綱吉は体を乗り出して、その頬にキスを贈った。

目を合わせて照れて笑う。

「今日はどこまで行きましょうか?」

ちらりとバックミラーに視線を送る。

「とりあえず、逃げようか。」

「そうですね。」


アクセルを踏み込んで急発進した車は花びらを撒き散らしながら、
その車の中で綱吉は体を乗り出して振り返り、
追走して来た黒塗りの車の列に笑顔で大きく手を振った。




幼い字で名前を書き綴ったあの婚姻届は効力なんてないけれど
今も大事に大事に取ってあって
幸せそうな骸を見ている綱吉も、何だか幸せだったりする。




09.10.13
フライングでおめでとう、綱吉!!
骸としあわせになってくださいvv
一番のプレゼントは大好きなひとの笑顔ですね!

毎年繰り広げられるカーチェイスですねw
10月14日はボンゴレの権力を使って検問がやたらと張られていたりとか(笑)
そんなものは掻い潜って骸と綱吉は勝手に旅に出ますww
追走されて青筋浮かべたリボーンに銃を乱射されながらも楽しく逃避行してればいいと思いますvv