季節外れに日焼けした肌から落ちた汗が皺の寄った白いシーツの上に小さな染みを作る。


しっとりと薄く焼けた背中に体を重ねて揺らすと、
綱吉はふっ、と短く息を詰めて汗とも分からない雫が眼尻から滑った。


繋がった部分はふっくらと色付いていて、これだけ長く体を繋げているから
少しは痛いかもしれないが、それでも随分と卑猥に見える。

痛くならないように細心の注意を払って
とろりとした液体で濡らし続けているから問題はないだろう。


汗で濡れる項に鼻先を埋めて匂いを嗅ぐようにしてから、その細い項に緩く歯を立てた。


「こんなところまで焼けてる。」

「・・・っ、」

奥を突いて体を揺らすたびに、淡い色の髪の隙間から覗く項まで焼けている。
面白くない。
本当はもっと白いのに。

綱吉の薄い体をひっくり返してわざとらしく胸の先端に唇を擦り付けた。

「・・・ぁ、」

ひくんと引き攣る体に少しばかり満足したように口角を上げもしたが、
小麦色、という表現がよく当て嵌まる肌に手を滑らせていく内に、骸の唇はまた不機嫌に引き結ばれた。



話しは大して難しいことではない。



学生で言うところの冬休み、年を越す期間に綱吉は海外へ行っていたのだ。


綱吉の父親はボンゴレの門外顧問であり、骸も会ったことはある。
けれども、家族に見せる顔と組織にいる顔のあまりの違いに面喰ったのは事実だった。
別人と言っても過言ではない。

その父親が滅茶苦茶な人格を存分に発揮して、
帰って来たと思ったら、休みが取れたから海外に行くと言い、寝ていた綱吉は寝間着のまま連れて行かれたらしい。

目が覚めたら異国だったという、普通だったらふざけるなと言われるだろうことでも
綱吉の周辺でなら十分にあり得る範囲の非常識だ。


行っていた、というよりは拉致された、という表現が適確なのは骸も認めざるを得ないのだが
認めるのと納得するのとではまったくの別問題だ。


鬼の家庭教師は綱吉にバカンスを与えるはずもなく、異国の地でも大層いたぶられたのも知っている。

目の前に広がる天国のように美しい南国で、
望まずに連れて行かれた挙句遊べないのだから、綱吉は立派な被害者だ。


綱吉を責めるのは筋違いなのも分かっているが、納得は出来ない。

どういう訳かいつも綱吉の周辺に居座る連中や、キャバッローネまでいたというのだから。



白いままの肌に手を添えて滑らせてから、綱吉の細い腰を掴んで体を揺すると、綱吉が掠れた声を漏らした。

「肌を晒したのですね、こんなに焼けてしまうまで、」

何度目になるか分からない不満を漏らしながら、体内を往復すれば綱吉はきゅうと唇を噛み締めた。

濡れて皺の寄った唇に顔を寄せてちろりと舐める。

「裸同然の格好で、人に肌を晒して、」

白いままの薄い尻に手を滑らせて繋がりを深くすると、綱吉は吐息を震わせて骸の背中にしがみ付いた。


骸はその腕を引き剥がしてベットに押し付けた。


キシ、とベットが軋む。


綱吉の熱に溺れた瞳が見開かれて、すぐそこの骸の瞳を見上げた。


骸はほんの少しだけ目を細めた。


何も一緒に行きたかった訳ではない。

ましてや除け者にされたとか、そんなこと少しも思ってない。
大人数で煩わしいだけだ。



ただ、悔しいのだ。


綱吉が意識が何かに向いてしまっていることが。



異国にいる間は綱吉は疲れ果てて夢も見ないほど眠ってしまっていた。

それでも夢の隙間に入り込んで意識だけでもコンタクトを取っても、所詮は夢。

骸は覚えていても、綱吉は覚えていないこともある。

異国にいた期間は、気配は何となく覚えているが話したことすら覚えていなかったのだ。


「君は、僕を置いて行った、」


本気でそんなことは思ってない。
けれど口から出任せだと言うにはあまりにも真実に近い。


綱吉の見開かれた大きな瞳がゆるゆると水分を孕んでいって、
ゆらゆらと揺れてとうとう雫が零れ落ちた。


「君は、僕のことを忘れていた、」


ぽろりとまた涙が落ちる。


綱吉は随分と罪悪感を抱いていたようだった。

だからこんな理不尽なセックスにも付き合ってくれているのだ。

会ったときはまだ日が高かった。
でも今はもう辺りはすっかり暗くて、どのくらいの時間が経ったのかも分からない。

綱吉は楽しくはないだろう。
ぐちぐちと不満を並べたてられて、
セックスを覚えたばかりだというのに無理に快楽に溺れさせられて。


でも、それでいい。


ふるふると震えるような睫毛にキスをして、また、快楽に落とす。

くと仰け反った背に腕を押さえ付け、早急な動作で綱吉の中を往復して
潮の香りがしそうな首筋に歯を立てた。


いい思いはしなかったにしろ、綱吉にはそこで思い出がひとつ増えてしまった。
時間が経てば笑い話しになるだろう。

それが、嫌だった。

だからこうして嫌なものでも自分との記憶を植え付ければ、
必ず自分のことも思い出すだろう。

本当は綱吉の中をぜんぶぜんぶ自分だけで埋め尽くしたいのに
それが叶わないのならせめて、そのどれもに自分を繋げたい。


まるで駄々を捏ねる小さな子供のようだと思う。


でも駄目なんだ、綱吉のことになると。


海なんて好きでも嫌いでもなかったけれど、大嫌いになった。


海を見たら綱吉はきっと、自分じゃない何かを思い出すから。


綱吉は吐息を震わせて、ひたりと動きを止めた骸を
涙をいっぱい溜めた瞳で見上げた。


月明かりの仄暗い部屋の中でも眼球は光を含み、
骸は月がそこにあるのではないかと錯覚する。


「骸、」


はたりと涙が落ちる。


「むくろ、一緒に、海に行こうな、」


別に、海に行きたい訳ではー・・・


無意識に落とした額は、綱吉の汗が滲む額とこつりと合わさって
骸の髪がさらさらと綱吉の頬に掛かった。


「・・・約束ですよ、」


小麦色の手と、白い手が、シーツの上で結ばれて


「うん、約束・・・」


綱吉からその唇が重なって、骸はふるりと睫毛を揺らして


「むくろ、あいたかった、むくろ、」


骸は己の愚かさを嘲笑いながらも今は、綱吉の温度に身を委ねてキスをした。




2010.01.03
正月を海外で過ごす〜というニュースを見て妄想ですw
骸は綱吉を大好き過ぎればいいと思います。
綱吉は無自覚に骸を浄化してればいいと思いますw
ラブラブですねvvお似合いですねvvv
むくつなって美味しいですね・・・っ!!