「これ、よろしければどうぞ。」
にこにこと愛想のいいレジのおばさんに渡されたのは、短冊だった。
ふと店の外に視線を向ければ、そこには大きな笹の木が数本並んで、色とりどりの装飾がされてる。
天の川を模した折り紙が、緩く風に靡く。
「今日、七夕だ。」
言って隣の骸を見上げると、同じように店の外を見ているところだった。
「じゃあ、お兄さんもどうぞ。」
骸の分の短冊も出されて、骸は少し逡巡してから受け取った。
「短冊を飾った人は、次回ポイントが二倍になります。」
ピースサインをするように持ち上げられたおばさんの指先に、綱吉の目が輝いた。
「骸、飾るよ。」
言ってほとんど引き摺るように表へ連れ出す。
少しくすんだ自動ドアが開くと、湿気を含んだ熱風が行き過ぎた。
「・・・僕は君のお兄さんではないです。」
不服そうに呟いた骸に、綱吉は驚いたように大きな目をぱちぱちした。
不服そうな顔も、驚いた顔も、夕日の橙に染まる。
「違うよ、兄弟の意味でお兄さん、って言ったんじゃないよ。」
「どうですかね。」
「ほら、怒らない。」
簡易テーブルに乗っていた温いボールペンを渡すと、骸は納得いかないようにしながらも受け取った。
「世界征服とかなしな。」
「・・・あのねぇ、そんなこと願わなくても実現出来ますから。」
「こら!」
橙に染まった道は、家路に着く人たちで柔らかく賑わって、鳥さえもさえずりながら家に帰る。
並んで願い事を書き込んで、骸は笹の木の上の方に短冊を括り付けた。
「隣に並べたい。」
背伸びしたってどうしても届かない場所を指差して、綱吉は短冊を差し出す。
骸はぱちりと瞬きを下から小さく笑った。
「はいはい。」
「俺のこと、チビって思ったろ。」
「被害妄想ですよ。」
桃色の短冊の横に、水色の短冊が並ぶ。
あ、と二人はほとんど同時に声を漏らた。
「・・・願い事、一緒だ。」
柔らかい頬は橙よりも強く赤に染まり、骸を見上げる瞳は、もう何度も見ている照れ笑いに染まる。
骸も釣られるように、そっと微笑んだ。
「それなら、願いは叶いますね。」
うん、と照れて笑ったとき、係員から二人分のポイント2倍券を渡されて、綱吉はやったぁと小さく声を上げる。
「現金ですねぇ。」
綱吉はふふ、と笑う。
歩き出した骸の背中を見詰めながら追い掛けて、綱吉はまたふふと笑った。
「そんなに嬉しいですか?」
「うん。でも、今笑ったのは違うこと。」
まだ追い付いて来ない綱吉を振り返ると、綱吉は笑いながら骸が持っているスーパーの袋を指差した。
「所帯臭い!似合わない。」
とうとう笑い出した綱吉に、骸も笑った。
「こちらの方がお好みですか?」
瞬きをした綱吉の視線、骸の手に握られていたのは真っ赤な薔薇の花束だった。
骸は大袈裟な仕草で手を広げて微笑んでみせる。
「骸はそっちのが似合うよ。・・・でも、今は」
言いながら隣に並んで、そして薔薇を持つ手にそっと指が絡む。
途端に薔薇の花束は、所帯臭いと言ったスーパーの袋に変わった。
目を合わせて笑い合い、しっかりと指を絡めて手を繋ぐ。
二人の間で野菜が揺れた。
夕日は二人の影を伸ばしていく。
早くお家に帰ろう。
ねがいごとはひとつだけ。
これからもずっと一緒にいられますように。
2010.07.07
大学生くらいで同棲してるイメージですv
買い物したら荷物は骸が持ってあげて、でも途中で綱吉が手を繋いでくるから荷物半分ことか鼻血出ます。
ご飯は一緒に作ったりはぁはぁ妄想が止まらないですはぁはぁ