性描写アリ

合わせた唇から赤いワインが一筋溢れて、骸の白い頬を伝った。
けほ、と小さくむせると綱吉が楽しそうに笑って、骸の口元をぺろりと舐めた。綱吉はついでのように自分の唇も舐めて体を起こした。

淡い光しかない部屋の中で綱吉の唇がぬらりと光りを弾いた。

視線を外せずにいたら綱吉はまた顔を寄せてきたから、唇を重ね舌を絡めた。瞼を落とした暗い視界の中で、綱吉の指がカチャンカチャンと骸のベルトを外す音が聞こえる。骸はこの淫靡な雰囲気に、キスをしたまま思わず口元を緩めた。


外では凛々しいボスでも、何年経ってもセックスに恥じらいを見せる綱吉はベッドの中では可愛い姿のままで、骸からしてみたらそれは新鮮だし思わず意地悪をしたくなるくらい興奮もする。
けれど今日の綱吉はアルコールも手伝ってか積極的で、「今日は骸の誕生日だからオレにさせて」なんて可愛くおねだりされたら聞かない筈はない。


綱吉の指で肌蹴させられたシャツから、骸の白い肌が零れる。
そっと寄せられた赤い舌が胸を這って、骸は思わず息を詰める。積極的な綱吉の姿も何ら変わらず興奮するのだと分かれば結局のところ綱吉ならなんでもいいのかと、自分で自分が可笑しくもなった。

「くすぐったいか?」

伸ばした舌を引いた瞬間に、骸の肌と舌先に細い唾液が糸を引いてすぐに切れた。骸はまたじんわりと体の熱を上げて「いいえ。少しもくすぐったくないですよ。むしろ気持ちがいい」と言うと綱吉は微かに睫毛を伏せて微笑んだ。


目尻に朱を乗せて微笑む様は随分と艶を帯びている。知らずに鼓動が高鳴った。


出会ってからの年月を振り返らずにはいられなくて、どこか感傷に浸る想いで綱吉を眺める。憂いにも似た骸の視界の中で綱吉がサイドテーブルに手を伸ばした。

華奢なグラスを通り抜け、ワインボトルを通り抜け、リボンのほどけた小さな箱を通り抜け、綱吉の指先は蝋燭の火が消えたチョコレートケーキのホールに突き立てられ、そしておもむろに掴み取った。
骸がぱちりと瞬きをする間に掌に無造作に乗ったチョコレートケーキがぺしゃりと骸の胸に押し付けられて、そして塗り込む様に掌は腹へ滑っていった。ひんやりとしていたチョコレートは綱吉の掌の熱を孕み、じんわりと熱を帯びる。

何の躊躇いもなく綱吉は顔を寄せ、骸の肌の上のケーキに舌を伸ばす。

骸はそこでようやく事態を飲み込みクフ、と笑い声を零した。

「ケーキに見立てて食べるなら君に塗った方が良さそうですが。僕の誕生日なのだから」

溶けたチョコレートが骸のしなやかな腹筋の上を流れていって、白い肌に尾を引く。
綱吉の舌はそれを追って肌を滑っていき、ファスナーの間から微かに覗く茂みまで舐めた。無防備な箇所の刺激に骸は思わず息を詰める。

「今日はオレがするって決めたから、骸がオレに食べられるんだよ」

唇の上に乗るとろけたチョコレートを舌先だけで舐めた綱吉の台詞に、思わずゾクゾクとする。熱はとっくに下腹部に落ちてきている。
甘くなった舌で胸の先を愛撫されて震える吐息を漏らし、綱吉の柔らかい髪に顔を埋めた。少しずつ下がっていく綱吉の舌は臍に流れ込んだチョコまで舐め取った。

丁寧な愛撫はじりじりとじらされている感覚に陥って、骸は堪らず熱の籠ったそれを取り出した。綱吉はその先端にちゅうとキスをする。それだけで骸の瞳はじんわりと熱が滲んだ。

骸はケーキを掴み取った手で、きつく勃ち上がった自身のそれを握り込んだ。指の隙間からカカオのスポンジが緩やかに溢れて落ちる。

「これも食べて?」

綱吉は艶を増して微笑み骸の熱を孕んだ瞳を見上げて「もちろん」と囁いた。
しっとりと伸びた舌先が骸の熱を舐め上げる。骸はゆったりと濡れた吐息を零した。じゅ、と音を立て口に含まれれば、骸は柳眉を密やかに寄せた。
むせる様なカカオの香りとぴちゃりと水に濡れた音が部屋を満たす。

綱吉が骸のそれに愛おしく頬を寄せると、白い頬にチョコレートがこびり付く。
無意識に「ク、フフ」と機嫌のいい笑い声を漏らし、骸はそそり勃ったそれを口に含む綱吉の頬に褐色の液体が絡む指を滑らせた。
綱吉は指先を追うように骸の手に頬擦りをし、骸の長い指先を口に含み舐めた。骸は赤く染まった目元を機嫌よく細める。

「…可愛いですね」

うっとりと言って指で綱吉の舌を愛撫する。ちゅぱといやらしい音が鳴る。

とても機嫌が良かった骸だが、不意にふと睫毛を揺らした。そしてみるみる内に表情を険しくさせると、下腹部で揺れている綱吉の顔を救い上げた。
急に不機嫌になった骸に、綱吉は口元を拭いもせずにぱちりと瞬きをした。

「どこで覚えてきたんですか、こんな事」

骸の知る限りの綱吉はこんな事はした事がないし、綱吉の初めては全部自分が貰ったので前の経験からとか、そんな事もない筈だ。
鼻先を合わせて責める様に問い掛けるが、綱吉がキョトンと瞬きをしたので、骸も釣られて瞬きをした。

「何言ってるんだよ。骸の真似をしてるだけだよ」

今度は骸がキョトンと瞬きをした。

「食べた後にオレの指に何かついてたら、お前はいつも舐めるだろ。この間なんてオレの指でアイス食べてたし」
「……あー……」

骸は瞳を横に滑らせて低い声でなるほどと答えるしか出来なかった。
思い当たる節なんていくらでもある。問い詰めてみたものの、原因はじぶんだった。些か気まずさを覚えて視線をずらしたままでいると、不意にちゅうと頬にキスをされて目を見開く。

「ね、もしかして妬いたのか?」

骸は視線を戻す機会を失って横を向いたまま睫毛を伏せる。

「……分かるでしょう?」

明言するのを避けるが綱吉は楽しそうに骸の頬に唇を寄せる。

「オレが浮気したんじゃないかって、知らない誰かに妬いたんだ?」

まったくその通りだ。
骸は気まずさから睫毛を揺らし、観念した。

「ええ。とても嫉妬しました」

言えば綱吉はふふっと笑った。吐息が頬を擽ってそれすら熱に変わる。
これはもうしばらく言われ続けるなと(自分が綱吉の立場なら言うだろうから)覚悟した時、静かなキスが頬に落ちる。

「…かわいい」

間をおかずに直接耳に送り込む様な声で囁かれ、ゾクゾクした。これではいつもと逆だけど、それも悪くないなんて思う。

「…綱吉」

甘えて呼ぶと綱吉がすぐそこで微笑んで、深いキスが始まった。

「んっ」

不意に強く勃ち上がったそれの先端が一気に熱に飲み込まれた。堪らずに柳眉を寄せて声を漏らすが、綱吉は遠慮なく腰を落とし骸を体の中に納めてしまった。
ずぐずぐと強く脈を打つ互いの肉が熱くて溶けあってしまいそうで、知らずに荒い呼吸を繰り返した。

骸に跨っている綱吉も頬を赤く熟れさせて乱れた呼吸を続けていた。

ぎし、とベッドを軋ませて綱吉が一度体を揺らしただけで目の前が白く霞むようだった。

ぎしぎしとベッドが切ない音を鳴らし、綱吉の控え目な甘い声が唇から零れる。

綱吉が骸の上で体を跳ね上げる度、強く勃ち上がった綱吉のそれも濡れて光りを弾く。

堪らなかった。今すぐにでも綱吉の中に吐精したいくらいだった。

綱吉を愛撫しようと伸ばした手はやんわりと握られて肌に届く前にベッドに押し付けられた。

「だめ、きょうは、オレがするの」

荒くなった呼吸の合間に甘ったるい声で綱吉が紡ぐ言葉に、骸は堪らず微笑む。

「触るのも駄目ですか?」
「だーめ」

言うと綱吉はテーブルの上の真紅のリボンを取り、骸の両手首をやんわりと結んでしまう。

「おやおや…」

クフ、と笑い声を漏らすと、綱吉はリボンをベッドヘッドに結び付けた。
綱吉の目元が一層淫靡に赤く濡れる。

「ん」

ぎし、と再びベッドが鳴り始めた。淡い光の中で綱吉の白い肌が汗を弾く。
仄かに色付きそうなほど荒い吐息を零し続ける綱吉は酷く蟲惑的で、体に添うように勃ち上がったそれの先端から蜜が滴るのを見れば、骸はもう綱吉の色香の飲まれ吐精した。

「ああ…っ」

綱吉は体を震わせたが、最後まで骸の精液を飲み干すように体を揺らし続けた。繋がった部分から零れ始めた粘着質な音は次第に大きくなっていって、二人の体を濡らし始めた。

「ね、自分のは、あ、どうするの」

次第に動きを緩めていった綱吉は熱に溺れ濡れた瞳をゆるゆると持ち上げた。
一度震える吐息を漏らすと綱吉は骸に跨ったまま、何も言わずに自身のそれを握り込んだ。骸の見開いた視界の中で綱吉の手は大きく行き来を繰り返す。くちくちと濡れた音を立てながら、薄い胸の上で膨らんだ胸の先端を掌で擦る。かくんと綱吉は小さく顎を添った。

骸はどうしようもない熱を綱吉の体の中に埋めたまま、ああ、と甘い困惑の声を漏らす。

「生殺しですねぇ…」

綱吉の先端から濃密な体液がゆったりと骸の腹に落ちる。骸は快楽を耐えるように柳眉を寄せた。
不意に綱吉の動きがぴたりと止まったのでふと視線を上げると、綱吉はテーブルの上のワイングラスに手を伸ばしていた。
深く赤いワインを口に運んで傾けるが、綱吉は飲んでいる気配がなくぼたぼたと唇の両端からワインを滴らせた。ワインは頬を伝い顎を伝って、剥き出しにされた肩を滑って胸元まで濡らしていき、やがて骸の腹の上にもぱたたと落ちた。

綱吉はとろりとした瞳を骸に向け、グラスをベッドにぽとりと落とした。

「むくろ、舐めて…」

目を見開いた骸は拘束されているのも忘れ一気に体を起こそうとするが、リボンに腕を引っ張られベッドヘッドがカシャンと音を立てた。骸は再びベッドに体を埋める。

「これをほどいてくれないとお願いを聞けないのですが」

手首を持ち上げると、リボンと骸の腕時計が静かに重なった。


「…うん」

焦らされるかとも思ったが、リボンはあっさりととかれた。
ほどかれた瞬間、骸は放たれた獣のように体を起こし、綱吉に食い付いた。

貪る様に唇を交え、綱吉の体に挿し込んだ熱が抜けてしまわないように綱吉を強く抱え込む。合わせた唇から綱吉の切ない声が吐息と共に漏れた。

「むくろ、むくろ」

綱吉はともすれば泣き出しそうな表情で骸の名前を呼び、愛おしさを乗せて髪に指を差し込み頭を撫ぜる。ゾクゾクとして吐精したばかりなのに硬さは一向に失われない。
骸も熱い吐息を漏らしながらワインの筋を辿って、顎を食み、喉を舌で舐めて、肩を辿り、すでにふっくりと硬くなって尖っている胸の先端に甘く歯を立てた。

「あ!」

びくんと綱吉の体が悦んで、締め付けられた中に骸も荒い息を吐く。
綱吉が腰を揺らす。
綱吉のそれは濡れていて、二人の腹に挟まれて擦れる度に骸も興奮した。
ぐいと強く綱吉の腰を強く抱き寄せればそれの形をまざまざと腹に感じた。二人の間で濡れた音が響く。

「むくろ、むくろ…」

切迫した声に理性はおろか本能まで掻き消していくようだった。そこに残るのは剥き出しの自分だけ。

軽口のひとつでも叩いてやりたいところだが、生憎骸にもその余裕がなかった。

間を置かず綱吉のそれは強く脈を打ち熱い精液が二人の腹を濡らした。

「あ…あ…」

綱吉が弱く体を震わせると骸は吐精を促す様に綱吉の体を揺らした。

体を繋いだまま綱吉をベッドに押し付けて顔を寄せるとキスをした。
鼻先を擦り合わせると綱吉の濡れた瞳が薄らと覗く。

「ねぇ、僕もイカセテ」

綱吉は小さく頷くと骸の首に腕を回した。骸は綱吉の足を腕に掛け、貪欲に体を埋める。ぐちゅと粘着質な音が鳴った。
骸はとても近い距離で綱吉を見詰め、無心に出入りを繰り返した。忙しなく軋むベッドから羽毛の上掛けが床に滑って落ちていく。

綱吉は声も出せずに骸にしがみ付き、その仕草に骸はまた眩暈を覚える。

骸は欲のままに綱吉を愛して、一際奥に入り込んだ時に吐精した。

「あ…っは」

吐精が齎す快楽に思わず声を漏らした骸は荒い呼吸のまま体を倒して綱吉にキスをした。

汗が伝う綱吉の胸に頬を預けて忙しなく呼吸を繰り返すが、頭上では綱吉も同じ様に呼吸を乱していた。

暫くそのままで綱吉の上下する胸に気持ちを預けていたが、綱吉が汗の滲む骸の髪を優しく掻き上げたので顔をゆったりと上げた。

上げた先で綱吉が微笑むから、骸も一緒に微笑んだ。

「最高のプレゼントでしたよ。これも、大切にしますね」

言って腕に嵌っている時計にキスをした。時計なんて骸には必要のない物だけれど、普通に恋人同士が贈り合うようなプレゼントを、骸はとても気に入った。

ん、と綱吉は微笑んだまま短く頷き、そっと骸の頬を両手で包んだ。骸はふと目を見張る。

「もうひとつあるんだ。プレゼント」

おや、と骸は楽しそうに目を細めて鼻先を寄せた。

「これ以上の物が?もしかして、子供が出来たとか?」

綱吉はぱちりと瞬きをしてからぷっと吹き出し、骸の首に腕を回して抱き寄せるとくすくすと笑った。骸もくすくす笑って綱吉に頬擦りをする。

「何、子供欲しいのか?」
「どうしてもと言う訳ではありませんが、君との子供だったらいてもいいなとは思ってます」
「初耳。でもオレ男だから無理だよ」
「結婚をしてありきたりなマイホームがあって子供がいて。そんな生活でも君とならしてもいいと思ってます」
「だから、子供は無理だってば。養子でも取る?」
「いいえ。君と僕の血が混ざっていなければ意味がありません。他人の子供は要らない」
「だーかーらーそれは無理だって」

くすくす笑いあって体を抱き締め合う。汗が皮膚の上で混ざり合って、体まで溶けあってしまいそう。

骸は不意に顔を上げると、そっと綱吉の頬を掌で包んだ。綱吉は静かに瞬きをして、骸を見詰める。

「ねぇ、僕をこんなに変えてしまったのは君なんだから、ちゃんと責任を取って。最期まで一緒にいて」

どこか憂いを乗せる骸の微笑みを、綱吉は真摯な瞳で見上げる。

「命が終わるまでのオレを全部骸にあげる。これがもうひとつのプレゼント」

骸は微笑みを固め、瞳を揺らした。

「…本当?」

そんな骸に、綱吉は強く頷く。

「オレはお前みたいに口に出して言えないけど、ずっとそのつもりだった。でも言わない事で骸を不安にさせていたのなら、それはごめん」

骸の瞳はじんわりと水分を孕んだ。
そっと綱吉の胸に頬を預ける。

綱吉が自分に対して真摯に向き合ってくれているのは本当は分かっていた。言葉が欲しいなんて、女々しいだろうか。
けれど、どうしても言葉が欲しかった。

だって、綱吉は絶対に嘘を吐かないから。

骸は綱吉の言葉を噛み締めるようにそっと微笑んで顔を上げた。

「来年のプレゼントが決まりました」
「え!もう!?」

骸がクフと笑い声を漏らすから、綱吉も思わず笑う。

「君がこの世を去った後の魂も全部、僕にください」

大きく揺れた綱吉の瞳を見詰め、骸は静かに微笑む。

「来世もその次も、その次も…僕がこの魂であり続ける限り、君を僕にください」

綱吉はふと笑う。

「今言ったら来年のプレゼントじゃないだろ」
「じゃあ今年のプレゼントで」
「欲張りだな」
「前からでしょう」

綱吉はとても柔らかく笑って、頷いた。

「ちゃんと見付けてね」

骸は人と同じ様な幸せと、それ以上の歓びを持って、愛おしい綱吉にキスをした。



2010.06.09
ちょっとフライングだけど9日にしておくおめでとー!!!!!!!!!!><////ムクツナ愛してる!!!!拘束とか自分でにゃんにゃんとかケーキとかワインとか楽しかった!!私が!!でも骸と綱吉も楽しかったと思い込んでる!!!