!!死ネタ!!

*暗いです

*骸が酷い男です。違った意味でもどんどん酷くなっていきます。

*綱吉が病気で亡くなってます。

*途中性行為を思わせる描写があります(骸×綱吉です)

大丈夫な方のみ、ご覧ください。






「弁護士の先生方がお見えです。」

「またですか。」

「はい・・・いかがなさいますか?」

「・・・行きます。」

うんざりする。

まだ相続の書類にサインをしていないから仕方がないのだが
こうも面倒に感じるとは思わなかった。

この間も気分が優れないからと追い返したばかりだというのに。

面倒だが、スーツに腕を通す。

決められた「お悔やみの言葉」を並べ立てられるのも
相続の話しをするのも面倒臭い。


応接間に行けば、綱吉の親族も顔を揃えていた。


未練がましい。醜い。
綱吉は僕を選んだのだ。


「この度はご愁傷様でした。綱吉さまは」

「そういうのはもう結構ですよ。」

酷く苛立つ。
撥ね付ければ大人しくなって、書類をテーブルの上に並べ始めた。

「財産の相続は、ご遺言の通りに執行させて頂きます。」

分かり切っていることを言われるのがこんなに腹立たしいとは思わなかった。

「書類に目を通して頂いてからサインをお願いします。」

ペンを手に取ることすら面倒だ。

「不動産はすべて骸さまにお任せするとのことです。」

苛立って思わず溜息を落とすと、伺うような顔をされる。
めんどうくさい。

「それと綱吉さまのご遺品なのですが、売却出来るものは売却に、残りはすべて処分とのことです。」

「・・・え?」

「先日ご説明出来なかったのですが、ご遺言です。」

言って差し出された紙には、見間違うはずがない綱吉の文字が書かれてあった。

確かに『遺品は売却処分 又は 処分』と書かれている。


何を、考えているんだ。


「それでは書類に」

「放棄します。」

「え!?」

くだらない、こんなもの。


何を考えているんだ、綱吉は。

僕に、何の相談もしないで。

「放棄するというのは相続をですか!?」

煩い。

「それなら手続きを」

煩い。

「煩い!」

声に驚いたのは自分もだった。

静まり返った部屋を後にする。

なぜそんな大声を出したのか、自分でも、分からなかった。




眠れない。

ベットはただ広く、寒々としている。


寒い。


綱吉は一緒に寝るには温かくてちょうどよかったから。

けれど隣に腕を伸ばしてもそこには誰もいなくて
ただ冷たいシーツが広がっているだけだった。

こうして目を閉じていればまだ、綱吉の匂いがするのに。


柔らかな綱吉の、匂い。


キスはいつもしていたがあれだけ一緒にいたのに、綱吉と体を重ねたのは二回だけだった。

綱吉の体に障るから性交はしてはいけないと籍を入れた時に医者から煩く言われていた。
無粋なまでに煩く言われていたが、一度だけでもと体を繋いだ。


今でも覚えている。


白い肌が緩やかに上気していく様も、

ゆったりと閉じた瞳、目尻から静かに零れた涙、

幸せだと呟いた唇も。


知ってか知らずか、医者はまだ煩く言うものだから
綱吉は珍しく酷く落ち込んだ様子で『それでも俺には一度だけなのに。』と言った。


だからまた抱いた。


これ見よがしに互いの体に情痕をつければ、
呆れて言葉も出ないようだった医者に二人で笑った。


目を開けるとカーテンが開けっ放しになっていた。


体を起こして、外へと足を踏み出す。

綱吉はたまに、ベットを抜け出して庭へ出ていた。


薔薇の木の下まで行っても、『見付かっちゃった』と言って笑う綱吉はいなかった。
本当は、見付けて欲しいくせに。
その時ばかりは、少し寂しそうに笑うくせに。

綱吉がしていたのと同じように指先を土の中に埋めた。

『土の中は、とっても温かいんだよ。』

『ここに還ると思えば、死ぬのは怖くない。』

うそつき、怖いくせに。

言えば綱吉は涙を流した。


綱吉は、僕の前でしか泣かなかった。


怖いなら死ななければいいと言ったのに、確かに綱吉は頷いたのに、
綱吉を好きに出来るのは僕だけだと言ったのに、


なぜ、病の好きにさせた。


体を繋げた行為でさえ、その命を縮めていたのだとしたら、

抱かなければよかった。

そうすれば綱吉は、まだここにいたのかもしれない。


いずれこうなるのだったら、もっと抱いてしまえばよかった。

そんなことで、しあわせが得られるのなら。



瞼を持ち上げて見上げれば、薔薇の茨の間から紫色の空が見えた。
白い月に、夜明けが近い。



けれど、



例え夜が明けても、目を開けてみても僕は、



一人だった。



09.12.14