骸が遊び人でナルシスト(笑)大丈夫な方のみどうぞv
さっきから部屋の隅で一人で下を向いている子が気になっていた。
ショートカットでナチュラルなメイクしかしていないし、正直あまりぱっとしない。
最初はみんな気遣って話しかけていたりしたが、風邪が治ったばかりだからと言ってあまり話さないし(実際声が少し低い)、酔ってくると騒ぐのに夢中にしまって、その子はどこかはにかむように一人グラスを見詰めているだけになった。
普段はそんな子は気にも留めないのだが、骸は化粧の濃い女に飽きてしまっていたので軽い気持ちで気に掛けていた。
落ちない女はいないと自負しているし、擦れてなさそうなこの子ならちょっと声を掛けて微笑んだら簡単について来るだろう。
現にこの席にいる女性全員に、席を立った時に番号を渡されたり誘われたりしている。この子だって例外ではない筈だ。大人しそうだからきっと自分に声を掛けられないのだろうと考え、骸はおもむろに席を立った。
女性達の期待に満ちた視線をかわして目を付けた子の隣に座ると落胆の空気が漂う。
骸は気にもせず隣の子に視線を落とすと、薄く茶色の瞳が不思議そうに骸を見上げていた。
近くで見ると思っていた以上に可愛いかもしれない。
骸がにこっと笑うと、その子はぱっと視線を外し俯いた。新鮮な反応だ。骸は思わずクフっと笑い声を零し、唇をそっと耳に近付けた。
「この後、二人で外に出ませんか?」
伏せられた茶色の瞳がうろうろと手元を彷徨っている。これはもう落ちたな、と骸は思った。震える様な唇がそっと開く。
「……気持ち悪い」
骸はぱちりと瞬きをした。目の前にはストローがささったオレンジジュースと分かるグラスが置いてある。骸は心の中で首を傾げたが、もしかしたらこのジュースを頼む前に飲んでいたのかもしれない。
「飲み過ぎたのですね」
茶色の瞳が睫毛の下からそっと骸を見遣るが、目は合わない。心成しか顔色が悪い。
「……凄いポジティブですね……」
何が?
骸は心の中でまた首を傾げた。一体何に対してそう思ったのだろうか。もしかしたらこの子は俗に言う不思議ちゃんなのかもしれない。だって言っている事が不思議だ。
やっぱり今までにないタイプかもしれない。尚更いい。骸はまたそっと耳元に唇を寄せた。睫毛がぴくんと揺れたので骸はいい気になる。
「僕の部屋で飲み直しましょう」
普段人を家に上げる事はないし、相手の家にもいかないけど今日は特別だ。この子はホテルには行かなさそうだ。そうすると目の前で茶色の瞳がじんわりと滲むのが見えた。可愛らしいじゃないか。骸は得意気に思う。
「……ナルシストきもい……」
何が?
骸は言葉が理解出来なかった。目の前の子は心成しか一段と顔色が悪くなっている。もしかしたらこの子は所謂ツンデレなのかもしれない。二人きりになったら甘え出すに決まっている。
だって今までカッコイイと言われた事は数え切れない程あるが、きもいなんて言われた事なんて一度もない。
こうなったらもう、二人きりになるしかない。
「ぐふぅ」
騒がしかった個室がざわめいた。
「今、奈々ちゃんが変な音漏らさなかった…!?」
骸はくったりと力なく揺れる奈々と呼ばれた子の肩を抱き寄せた。
「酔ってしまったみたいです」
「え!?確かアルコール頼んでなかったよね…?」
骸は目の前のオレンジジュースに視線を落としてからにっこり笑った。
「緊張してここに来る前にワインをラッパ飲みしたそうですよ、二本」
「二本も!?」
「ラッパ飲み!?」
見掛けによらないねとざわざわしている人達をよそに、骸はくったりしている子を横抱きにした。
骸はこの子と二人きりになるために、テーブルの下でみぞおちに一発喰らわせたのだ。もちろん手加減はしたが程良くきまって気を失ってくれた。
ミニスカートなので手で裾を押さえるさり気ない配慮も忘れずにしてから立ち上がる。
「では、そういう訳で」と、骸以外には全然分からない「そういう訳」で、何も状況が飲み込めていない人達を無視して颯爽と部屋を出る。
骸は鼻歌でも歌いそうな雰囲気で客待ちのタクシーの窓を器用にノックする。運転手に二度見されたけど少しも気にしないで、気を失っててろんとしている子を横抱きのまま膝に座らせた。
行き先を告げてタクシーが走り出すと、骸はおもむろに『奈々ちゃん』の腹筋を撫でた。
女の子にしては少し硬い気がした。服の上から撫でてみたらやっぱり少し硬い気がするけど、痩せているからかもしれないと思い直す。
骸は何だか上機嫌だった。
家に着くと電気も点けずに寝室に向かった。
そしてベッドの上にその痩身を横たえると、骸も迷わずベッドに乗り上げた。
露わになった額をそっと撫でてから、躊躇いもなく『奈々ちゃん』のブラウスのリボンを解いた。
するり、と擦れる音がして、茶色の瞳がはっと開かれた。
目が合うけど、骸は少しも動じずにこっと笑ってみせた。
「僕の家です」
茶色の瞳がますます見開かれ、忙しなく左右を見遣ってから起き上ろうとしたが骸はもう腕を押さえていたのでそれは叶わなかった。
「どうなってるんだよこれ…!」
じたばたと動く腕は意外に力が強かったけど、骸は難なく抑え込んだ。
「どうも何も…君が素直ではないから」
平然と言って退けると茶色の瞳が唖然と見開かれ、薄暗闇の中でも分かるくらいに顔色が悪くなる。
「ちょ、な、えええぇええ…!?」
骸はその間にもぷちぷちとブラウスの釦を外していくので、細めの腕が骸の肩を押すけどびくともしない。骸はふと瞬きをするとにこっと笑った。
「キスして欲しいですか?まぁそうですよね」
「な…!んっ」
躊躇いなく唇を重ねたから、舌は難なく口内に入れてぺろりと柔らかく舌を舐める。
びくんと縮こまった舌を緩く吸って甘く噛み、逃げられない様にして舌先を絡める。肩を強く押されるけど後頭部を強く捕えて顔を逸らせないようにすれば十分にキスを堪能出来た。
ちゅと短い音を立てて唇を離すと、目に涙を溜めた奈々ちゃんが頬を真っ赤にして震えていたので不覚にもどきりとした。
「し、信じらんな…」
「ああ、僕とキス出来てそんなに嬉しいですか」
「ちょ、ぇええ、な、何でこんなに噛み合わないんだよ…!ここまでくると怖いよ…!」
「怖い?もしかして初めてですか?大丈夫、優しくしますね」
「怖いってええええええ!!!」
じたばたと暴れる奈々ちゃんを、鼻歌混じりに押さえ付ける。何て可愛らしい子なんだろう。骸の機嫌は益々良くなった。
「ね、おねがい、マジでちょっと待って…!」
「ああ…そんな風に誘わないでくださいよ。がっついてしまいそうです」
「やっぱりか…!やっぱりそんな風に取るのか…!!ね、ホントさ人の話し聞こうよ…!」
骸は逃げようと体を起こした奈々ちゃんを押さえなかった。背中を向けた奈々ちゃんのブラウスをするりとずらしてブラのホックをぱちりと外す。
「あ…!」
慌てて胸元を押さえようとするが間に合わず、形のよい乳房が溢れて、落ちた。
落ちた。
シーツの上に。
骸はぴしりと動きを止めた。
奈々ちゃんも動きを止めて、シーツの上に落ちた乳房を見ている。
黒いレースのブラから覗いている奈々ちゃんの胸は真っ平らだった。
真っ平ら。
貧乳所の騒ぎではない。
骸はぱちりと瞬きをする。
空気が振動して奈々ちゃんがぴくりとした。
骸はにこっと笑う。
「胸がないのを気にしていたのですね。ある程度ある方がいいと思ってましたが、君の体を見て全く無くても大丈夫だと思いました。安心してください」
腰を抱き寄せてまたベッドに倒すとスプリングが軽快に揺れた。緩く体を弾ませながら、茶色の瞳が大きく開く。
「おま、ちょ、おかしいだろ…!」
「もうコンプレックスに思わなくて大丈夫ですよ」
「もう駄目だこいつ…!」
体を捩って逃げようとする奈々ちゃんのブラウスはほとんど脱げていて、その背中に舌を這わせると低い声がぎゃあと言う。
色気のない声は普段なら興醒めだけど骸の気持ちは盛り上がる一方だった。
奈々ちゃんが枕元の放ってあった鞄から財布を出して慌てた仕草で中を探っている。
「避妊具ですか?」
「もう黙れお願い…!あった!」
言うのと同時に骸の目の前に突き出されたのは運転免許だった。余りにも目の前だったので骸の目が少し寄る。
そこに記載されていた名前は「沢田綱吉」
写真は目の前の奈々ちゃんに瓜二つだ。
骸は指先で免許証を受け取ってまじまじと見詰め、写真と奈々を何度か往復した。
「一卵性双生児ですか?そっくりですね。お兄さん?」
「……先入観って凄いな……」
免許証の向こうで溜息と一緒にどこか疲れた声がした。
伸びてきた指先が骸から免許証を奪って、そこに意を決したように眉を吊り上げた奈々ちゃんの顔が現れた。
「これ、オレだから!」
奈々ちゃんが免許証を顔の横に並べた。確かにそっくりだ。
骸はぱちりと瞬きをした。
「え?奈々って…言ってませんでした?」
「あー…それ母さんの名前なんだ」
途端に決まり悪そうに眉尻を下げた「綱吉くん」に骸はぱちりと瞬きをしてから、じわじわと状況を飲み込んだ。
「うわあ!ちょ、おまえ…!!やめ」
それでもいまいち諦めが付かずにミニスカートの中に手を入れておもむろに「そこ」を掴んだ。
「ちょお…!揉み過ぎ…!!!」
念の為に揉んでみるが、確かにそこに何かあった。骸は抜き取った手を見詰める。
そしてきつく眉根を寄せて、顔を真っ赤にして丸くなりながらも眉を吊り上げている綱吉を見遣った。
「女装趣味のホモって事ですか?」
「な…!」
綱吉は大きく目を見開いて、心外だと言わんばかりに口を茫然と開いた。
「違うよ…!」
骸は心底嫌そうに眉を寄せて、溜息と一緒にベッドに腰を落とした。
「帰ってください」
綱吉がベッドサイドの時計にちらっと目をやったので釣られてそちらを見遣る。
もう午前一時を過ぎていたので電車はない。けれどそんな事知ったこっちゃない。
「帰ってください」
もう一度強く言うと、綱吉はずるずると鞄を引き寄せて体を引き摺る様にベッドを下りた。
骸はベッドに腰を落としたまま見向きもせずに、扉が閉まる音を聞いていた。玄関をかちゃりと開ける音がして、何事もなかったように静かに閉まる。
「…」
部屋の中に耳が痛いほどの静けさが満ちて、骸は深い溜息と共にぐったりと項垂れた。
まさか、男だったなんて。
いや、確かに女の子にしては力強いし腹筋硬いし声も低いけど、綱吉の言う通り先入観って本当に凄い。男だなんて思いもしなかった。
初めてときめいた相手が男ってそんな馬鹿な。しかも男とキスしてしまったじゃないか。
骸はまた盛大な溜息を吐いた。
無造作にベッドに放っていた指先がとても柔らかい物に触れて視線を落とし、骸は口を引き攣らせた。ふるふると揺れる肌色のそれは綱吉の胸元に宛がっていた物だった。
胸を、置いて行くな。
骸は苛々と髪を掻き乱し、くそ、と呟くとベランダに出る。夜風が冷たい。少し乱れた髪を風に靡かせながら、手摺りに手を置いて下を覗き込む。
ちょうど綱吉がエントランスから出て来た所だった。
上から胸を落としてぶつけてやろうかとも思ったが、何かあったら凄く面倒臭いので止めた。
ヒールでぎこちなく歩いている足は、心成しか痛そうだった。それはそうだろう。ヒールなんて履いた事ないだろうから。
骸は緩く眉根を寄せる。
しかも向かっているのは駅とは逆の方向で、そっちに行っても住宅ばかりだ。今はもう電車はないけど、駅前ならタクシーくらいいるだろう。
骸は眉根を寄せて少しずつ遠ざかる綱吉を見ているだけだったが、綱吉の後ろから歩いて来た二人組の男が綱吉に声を掛けたのでぴくと眉を揺らした。
二人組は酔っているようで、綱吉の腕を掴んだりもしている。この暗がりであんな服装してたら女の子に見えても仕方ない。
骸は無意識に舌打ちをすると、部屋を出た。
「僕の彼女に何か用ですか?」
憮然と言い放つと、三人同時にはっと骸を振り返った。
じろと睨むと男二人はそそくさとその場を後にして、残った綱吉だけが驚いた様に目を大きくして骸を見ていた。
骸は一度面倒臭そうに目を逸らしてから溜息を落とした。
「そっちに行っても住宅しかありませんよ」
言うと綱吉はゆるゆると視線を落として、一緒に眉尻も落としていった。気が強そうに思ったが、そうじゃないのかもしれない。
「あと、こういう物は置いていかないで貰えませんか」
どこかしゅんとして見える綱吉の頭に胸を二個乗せてやる。癖毛のお陰もあって二個とも乗ったまま落ちない。それでも綱吉は少し俯いたままだった。
「あとこれ、お前のですよね」
言って掲げたのは綱吉の財布だった。綱吉はあ、と口だけを動かす。
鞄の中に落としたつもりだったのだろうけど、上手く入らずにベッドに転がっていたのを出掛けに見付けたのだ。
「千円しか入ってないってどういう了見ですか。まぁどっちにしろこれじゃあタクシーにも乗れませんよね」
「ちょ、勝手にみるなよ…!」
綱吉はおもむろに財布の中を見始めた骸に手を伸ばすが、骸は財布を高い場所までひょいと持ち上げてしまう。
「…今日、女の子はお金掛からないって聞いてたから…」
「…もしかして無銭飲食が目的だったんですか?」
「ううん…違うけど」
もごもごと口籠ったきり先を言わない綱吉に、骸はぴくと眉をいからせる。
「別に?お前の事などどうでもいいですけどね?」
綱吉が俯いたままなのでまた苛々してくる。頭には胸を乗せたままだ。
「歩いて帰る気ですか?並盛はここからだったら歩いて5時間は掛かりますよ」
「え…!そんなに掛かるのか…!?」
「黒曜とは一応隣町ですけどね、お前の家は並盛の端、ここは黒曜の端です。そのヒールで痛い足ならそれ位は掛かるでしょう」
「あ…」
骸は綱吉の定期券を勝手に財布から出して眺める。綱吉は無意識に足を擦り合わせた。やっぱり痛そうだ。
「僕の家に泊めてやっても構いませんけど?」
綱吉が躊躇う様な表情を見せたので、益々骸は苛々する。
「勘違いしないでくださいね。僕は男に微塵も興味がないので襲われると自意識過剰な事を思われるのは心外です」
「…いや、思ってないけど…」
そう言ったきりまた黙ってしまうので骸の怒りは頂点に達する。一体何に怒っているのか骸自身よく分かっていないのだけれど。
「この財布を返して欲しければ家に泊まりなさい」
財布を掲げて憮然と言い切る。綱吉は唖然と目を見開いた。
「なぁ…!?」
「ほら早く来なさい」
言って手首を掴むと強引に引いて歩き出した。後ろから足を引き摺ってよろよろと着いてくる音がする。
骸は憮然と口角を下ろして歩いて行くと、今度は後ろからぐずぐずと鼻を啜る音が聞こえてきて骸は目を見張った後、瞼を半分まで落とした。
え、泣く程嫌なの。
どういう訳か地味に傷付きながらも、今手を離すのはかえって不自然なのでそのまま歩く。エレベーターに乗り込むと目をごしごし擦ってる綱吉が嫌でも視界に入って微妙過ぎる気持ちになる。
「寝室、使っていいですから。寝室からもバスルームに行けるのでどうぞご自由に」
言いながら骸はクリーニングに出したばかりのYシャツを綱吉に押し付けた。
「生憎部屋着と言うものは持ち合わせていないので、それでも着ていなさい」
綱吉が目を腫らしているので電気は点けないままでいたけど、また綱吉が躊躇っているのが分かって頬を引き攣らせる。
「あ、あのさ…これ会社に着ていくのだろ…?さすがに悪いよ…」
「はあ?お前は落ちない染みになる程ヨダレでも垂らすのですか?」
「な…!た、垂らさないよ…!あのさ、パジャマとか」
「ありませんよ、そんなもの」
「え…まさか寝る時全裸とかじゃないよな…?」
「下着は穿いてます」
「…」
「…」
しばし沈黙が落ちた後、骸は怒鳴り散らかした。
「下着一枚で寝るのがなんでナルシストなんだ!!!!」
「オレは何も言ってないからな…!!!」
今にも掴み掛かりそうな骸から逃れるように、綱吉はぴゅっと寝室の中に入ってしまった。
骸がくそ、と呟くと、綱吉が寝室の扉から少し顔を覗かせた。
「あ、のさ…えっと…名前なんだっけ…?」
「……」
地味に傷付く。
「六道…骸です」
「あ…!ごめん…!!興味なかったからさ…!」
傷が抉られた。
まぁ男同士なのだから、興味がなくて当然だと骸は自分に言い聞かせた。
綱吉はまた何か躊躇っているようだった。そしておずおずと口を開く。
「あー…あの、ありがとうな…」
ふと顔を上げると、綱吉は薄い光りの中でも分かるくらい頬が赤くなっていた。
「助けてくれて…じゃ!おやすみ…!」
綱吉が逃げる様に扉を閉めて、骸ははっと我に返る。
(いやいやいやいや…)
骸は動揺を隠すために口元を押さえて冷蔵庫に向かうと、ぺローニの瓶を開けて直接口に含んだ。
アルコールの香りが鼻腔に広がる。
今少しどきっとした気がしたが、きっとアルコールのせいだ。
骸はほとんど一気に飲み干してソファに横になった。
寝室の奥からシャワーがタイルを打つ音がする。雨の音みたいだと思った。
はっと目を覚ますとまだシャワーの音が聞こえた気がしたが、部屋はもう鈍く明るくなっていた。
ふと窓の外を見ると灰色の空から雨が降っている。
骸は起き上って半開きの扉の中を覗き込む。ベッドが綺麗に整っていて綱吉の姿はなかった。
ダイニングのテーブルの上に汗を掻いたペットッボトルのミネラルウォーターが置いてあった。横にはビニールが掛かったままのYシャツが置いてある。結局着なかったのだろう。
ペットボトルを持ち上げるとぱたぱたと水滴が滴った。
時計を見ると午前6時前。きっと始発に合わせて出て行ったのだろう。
骸はペットボトルの蓋を開けて口に含む。少し温い。
(…礼のつもりか)
ここはオートロックなので、エントランス内にある自動販売機で買ったのだろう。
(わざわざ)
骸はもう一口水を口に含む。
「…」
声も掛けずに帰るなんて、なんだかもてあそばれてるみたいだ。
2011.10.30
続きます!お前呼びを使ってみたくて^o^