*若干暴力表現・性描写アリ
「可哀想に」
その言葉に似つかわしくなく、赤く染まる唇は愉しそうに弧を描き、声は弾んでいる。
「ふざけん、な・・・・!!!」
目一杯の虚勢は何の意味も持たず、切れた口の端から血が散った。
さんざん体を殴り付けられて、仕上げのように頬を殴られた。
華奢な体は簡単にコンクリートに打ち付けられ、立つ事も出来ないほどがくがくと震えている。
痛みからくる震えではないのを、綱吉は嫌というほど分かっている。
分かっているから、思い通りに動かない体を引き摺るようにして後ずさった。
そして、すぐに壁にぶつかる。
骸は愉しそうに、酷く愉しそうにゆっくりと綱吉に歩み寄る。
心臓が痛いくらい跳ね上がって、霞む視界で骸の足を見詰めていた。
ゆっくりと、一歩ずつ、
コンクリートに靴の音を響かせて、
こんな関係が一体何時まで続くのだろう、と痺れる頭の中でぼんやり思った。
骸がすぐ目の前で膝を付いて、くすり、と小さく笑った。
「沢田、綱吉」
噛み締めるように、名前を呼ぶ。
緩やかに伸ばされた手から逃れるように頭を壁に押し付けるが、すぐに追い付かれてしまう。
けれど赤く腫れた骸の手は、綱吉の頬に触れる僅か手前で止まった。
綱吉はきつく目を閉じた。
「沢田綱吉、」
熱に浮かされた震える声で呟くと、触れないギリギリの距離で綱吉の形を確かめるように手が滑っていく。
頬の形をなぞり、耳の形をなぞり、首の形をなぞり。
僅かな空気を挟んでいるのに
骸の手が酷く熱いのが分かる。
興奮、しているのだ。
体中を這い回る視線を、熱を感じて、綱吉は一層体を震わせた。
「沢田綱吉、君の目は、
何のために付いているのですか?」
危うい問い掛けに思わず目を見開いて、綱吉は後悔した。
(何て、顔、してるんだ・・・)
頬を上気させた骸は、恍惚とした表情に微笑みを浮かべて綱吉を食い入るように見詰めていた。
異色の瞳に激しい熱を湛えて、濡れた唇が言葉を紡ぐ。
「僕を見るためだけに、付いている筈だ。なのに何故、目を閉じるのです?」
「む、くろ」
口から出た声は思ったよりも震えていた。
(何て、顔・・・まるで)
ひくりと引き攣った足が骸の革靴に
こつん、とぶつかった。
骸は微笑みを湛えたまま、不思議なものを見るようにゆっくりと視線を落としていった。
「ああ、靴が邪魔でしたか。
必要ありませんね、こんな物。」
丁寧に脱がせると靴を放り、
無防備になった足にゆったりと手を翳した。
熱い。
「・・・っ」
顔を背けて小刻みに震える綱吉に顔をぐっと寄せる。
「さっきから、とてもいい顔をしていますよ。」
甘ったるい声に、呼吸が短くなって頭が痺れる。
一層顔を近付けて、綱吉の耳元で囁く。
「まるで、セックスしている時のような顔だ。」
頬を可憐に染め上げた綱吉は、はぁ、と熱い息を吐いて震えた。
とろりとした目の綱吉に妖しい笑みを返して、華奢な足首を掴み上げると一気に引き倒した。
「ひ・・っあ・・っ」
「ク、ハハ・・・!まだ足首にしか触れていませんよ?足首でも感じるのですか?」
足首に巻き付いた細い指が卑猥に蠢き、性感帯を直接嬲られているような錯覚に捕われ綱吉は全身を粟立たせた。
背中に当たる冷たいコンクリートは熱で簡単に馴染んでしまった。
「あ、は、あ・・・っ」
「ああ・・・可愛い・・・あ、可愛い、ですよ・・・」
舐めるような視線に体を仰け反らせた綱吉に、うっとりとうわ言のように囁きかけた。
「骸、あ・・・っむくろぉ・・・!」
目に涙を一杯溜めた綱吉がせがむように強く腕を伸ばすと、骸は目を見開いて早急に体を倒す。
貪るように口付けて、貪るように互いの体を弄った。
理性が吹き飛ぶその瞬間、一体何時までこんな関係を続けられるのだろうと思ってすぐに溺れた。
日は大分傾いて、二人を染める橙の光はやがて音もない黒に塗り潰される。
好き過ぎて愛し方が分からなくなった6927
周囲から見て歪んでても当人たちは結構幸せだったり。
たまに綱吉が骸ボコったり 笑
(笑じゃない) 08.12.12