千種は大分前に、綱吉に訊いた事があった。
その時綱吉は、「つつ、つ付き合ってないよ・・・・！！」と
泣き出しそうな顔で真っ赤になりながら千種の前から走って逃げた。
少し前にも、訊いた。
その時綱吉は、「む、む、骸に訊いて・・・・！！」と
やっぱり泣き出しそうな顔で真っ赤になりながら千種の前から走って逃げた。
骸には恐ろしくて訊けやしないから、
綱吉が分かり易い人間でよかったと千種はつくづく思った。
どうやらお付き合いはしているようだ。
ただ、アルコバレーノのご機嫌が麗しくないあたり、二人の関係に進展はないようだけれど。
やる事やってねーと付き合ってるとは言わねーと
顔面を引き攣らせるアルコバレーノの言い分も分からなくもないが、
「お付き合いをしている」事実が出来ただけでも、大進歩だと思う。
骸が沢田家に出入りするようになってから、
早起きの骸に釣られて綱吉も早く起きるようになったそうで、
遅刻もなくなったし、余裕が出来た分朝食の手伝いもするようになったらしいし、
綱吉は最近可愛くなったとご近所でも評判らしい。
（もっとも、綱吉本人はその評価は嬉しくないそうだが。）
そんな事もあってかは分からないが、
骸は無愛想にも関わらず綱吉の母親に大層気に入られていて
沢田家に泊まった日は、朝食もご馳走になってくるようになった。
母親には「ムッくん」と呼ばれているらしい。
ちゃんと返事もしているらしい。
アルコバレーノからその事実を聞いた時千種は、涙が出るほど、
笑った。
こんなに笑ったのは、そもそも笑ったのは、ほとんど初めてかもしれない。
そんな呼ばれ方をしてあの骸が怒らないのは、ただ偏に彼女が綱吉の母親だからだろう。
そうじゃなければ、血の雨が降る。
その内犬を上手く騙して呼ばせてみようと密かに目論んでいるのはまた別の話しで、
そこまで骸を変えてしまう綱吉の存在も、恋も、やはり不可思議なものだと思う。
綱吉が黒曜ランドに遊びに来て、そのまま泊まっていくようになったのはつい最近の話だが
家での手伝いの効果なのか、綱吉は当たり前のように朝食の手伝いをする。
「あれ〜骸さん、今日はコーヒーれふか〜？」
「あ、あれ？骸、今日コーヒーがいいって、」
「言ってはいませんが。」
そう言って骸はコーヒーに口を付けた。
千種と犬は心の中でおおっ、と感嘆の声を上げた。
骸は気分じゃないものは絶対に口にはしないので、
そのあたりは綱吉が察したという事なのだろう。
ここまでくるともう通い妻の域だ。
（それにしても）
千種は眼鏡を掌で覆うようにして押し上げた。
何だか二人を視界に入れているとこそばゆい気分になる。
別に見詰め合っている訳でもないし、手を握り合っている訳でもないし、
体を寄せ合っている訳でもない。
ただただ普通に、千種や犬と同じように座って言葉すら交わしていないというのに。
二人の間を流れる空気が日増しに濃密になってきている気がするのは気のせいだろうか。
睫毛を伏せたままちらと犬を横目で見遣ると、
犬も同じ事を思ったようで同じようにして千種を見ていた。
そしてテーブルの下で小突き合いが始まった。
奥手な二人の恋が、果たして上手くいっているのかハラハラしているのは何も
アルコバレーノだけではなくて。
壮絶な小突き合いは千種の容赦ない一撃で幕を閉じた。
「きゃん！」
椅子から転げ落ちて床に体をべちゃりと落とした犬に三人の視線が集まって
犬はう、と声を詰まらせた。
「犬。」と、止めに千種に名前を呼ばれて、いよいよ視線が痛くなった。
適当な事を言って誤魔化せばいいのかもしれないが、
生憎犬はそこまで頭が回らなかった。
「はい！骸さん！！」
勢い良く立ち上がってぴんと手を上げた犬を、骸は怪訝な顔で見上げた。
綱吉も大きな目をきょとりと瞬かせた。
「何ですか？」
「二人はもうエッチはしたんれぐ、ぐふ・・・・」
犬の首を片手で締め上げる骸を止める事すら忘れて綱吉は、
瞼の上まで赤に染めて逃げるように小さな両手で顔を覆ってしまった。
その指先まで淡く色付いている。
千種は眼鏡の奥で目を細めて、ゆるく親指の爪を噛んだ。
（この反応は・・・どっちだ・・・？）
綱吉の反応はどちらとも取れるが、最近ようやく二人きりで出掛けたばかりだから
進展があるのはまだまだ先かもしれない。
そんな事を思いながら千種は、床から離れ始めた犬の爪先を眺めた。
09.06.05
おでこにちゅーくらいはしてると思います。
骸から綱吉に、たまに（笑）
骸は綱吉が大事過ぎてどう触っていいのか分からなければいいと思います(ry)///
おでこにちゅーだけで濃密な空気になるので
結ばれてしまった日には、ラブオーラでみんな失神寸前になると思います（笑）
犬たんはみんなにいじられていればいいと思いますw