綱吉は無意識に滲んでしまった目元を骸の胸にぐりぐりと押し付けた。
「何してんですか。鼻水付けないでくださいよ。」
「付けてないから・・・でも、さ・・・よかったの?あの女の子たち・・・」
「え?」
「今日、一緒に帰ってたじゃん・・・」
ああ、とさして興味もないように言って、ちらと綱吉に視線を落とした。
「見てたんですか?」
「・・・たまたま。」
「それなら知ってるでしょう?」
「え?」
「くっ付いて来たので校門まで一緒に行っただけですよ。」
「でも鼻の下伸びてた。」
「伸びてませんよ。」
「ご、5ミリくらい伸びてた!」
まったく、と骸は溜息を落とす。
「何の因果で君のことなんか」
「なぁ・・!」
「世間には君より素直で賢くて器用な人間は五万といるのでしょうね。」
「何だよ、喧嘩売ってんのか・・・!?」
骸は何も言わないでころんと綱吉の方を向いた。
どきりと鼓動を跳ね上げた綱吉の赤い頬に、そっと手が、触れる。
「でも僕は、そういう人間には興味がありません。」
頬を染める綱吉はふわふわと睫毛を彷徨わせて、恥ずかしいから不機嫌になるけど、
骸はただただずっとそんな綱吉を見詰めている。
そして頬に触れた手が愛おしそうに綱吉を撫でる。
「僕は馬鹿で間抜けで、でもいつも明るくて、笑ってる優しい君にしか興味がありません。」
うっかりはっと視線を上げてしまって、かち合った瞳はすぐそこにあって
その瞳がいつも以上にはっきりと、確かな熱を湛えていた。
見ないようにしてたのに。
だって、逸らせなくなってしまうから。
こつりとぶつけた額の下で、骸は長い睫毛を伏せた。
「綱吉が僕のことをまるで意識していない事実を突き付けられたような気がして、
でも君と距離を置いても忘れられるはずなんかないと分かっていました。」
夢みたいだ、と骸が言うのなら、綱吉だってそう思っている。
「それこそ本当に、物心ついた時から君のことだけが、ずっと好きだったから・・・」
「俺は、気付くのが遅かっただけで・・・でもきっとずっとお前のこと好きだったと思う・・・
好きな子とか、全然いなかったし・・・」
「鈍感。」
「う、うるさいな・・・」
さっきからもうずっと煩い心臓の音が、骸に聞こえてないかが心配で
でもそっと近くなった唇の距離に、綱吉は睫毛を震わせてから、静かに瞼を落とした。
「あの子たち本当に一緒に寝てんの!?」
「あそこまで仲良いと気持ち悪いわよねぇ〜」
ゲラゲラ、と。
豪快な笑い声が届く。
どうやら旦那さまを放っておいて続いていた井戸端会議はほろ酔いで気分がいいらしい。
「・・・。」
「・・・。」
睫毛が触れ合うほどの距離で、骸と綱吉は目を合わせてぱちりと瞬きをした。
「・・・寝ますか。」
「・・・そだね。」
ごそごそと布団の中に納まる。
いつだって格好のつかない俺たちは、
でもきっと、それくらいがお似合い。
誓いのキスの代わりに今は、抱き合って眠るの。
2010.02.20
部屋でいちゃいちゃしてていい雰囲気になって押し倒したときに母親が帰って来て
「プロレス?まだまだ子供ねぇv」なんて言われて「・・・今度にしますか。」「・・・そだね。」とか
そういうドタバタで愛を育んでいくと思いますw
vvvkoucoさんに捧げますvvv