5歳骸×24歳綱吉


部屋の中は薄暗く、部屋の隅のスタンドライトの光も弱かった。
渇いた夜風がカーテンを揺らすと、月の光が絨毯に溢れた。けれどもそれもすぐに消える。

ベッドに敷いたタオルの上に座っている綱吉は困ったように眉を垂れて、頬をぼんやりと染めている。
強引に捲くられたズボンはひざ下で止まっていて、脛には白い液体が無数に流れている。
流れているその液体を、小さな子供が舐めた。

綱吉はぴくんと睫毛を揺らす。

「骸、くん」

名前を呼ぶと小さな子供は睫毛を持ち上げた。
鮮烈な赤と青の瞳がスタンドライトの光を弾いた。

骸は綱吉と目が合うと柔らかく笑って、また足に舌を伸ばした。

ぺろり、と舐める。

舐め終わるとベッドサイドに置いてあった牛乳のパックを幼い手で取り、綱吉の膝の頂上から牛乳をそっと流した。
ちゅう、と骸が膝の窪みを吸うと、綱吉は困った顔のままふふと笑った。

「…くすぐったい」

ははは、と綱吉が情けなく笑う。
骸はまた睫毛を持ち上げて、綱吉を見遣った。
その視界の中で、綱吉は少し真面目な顔をした。

「骸くん、もう牛乳飲めるようになったんじゃないかな」

骸は長い睫毛をゆるゆると下げて、憂いを乗せて笑う。綱吉はハッと目を開いた。

「…やっぱり、嫌ですよね。僕は母親を知らないから、恋しくて、それで先生に甘えすぎていたのかもしれません。
先生が嫌なら、無理には…」
「嫌なわけじゃないよ!」

骸が顔を上げると、綱吉は困ったように笑ってから、今度はとても柔らかく微笑んだ。
骸は分からないだけ睫毛を揺らす。

「嫌な訳じゃないんだ。たださ…ほら……オレなんかの足でそんな、さ…」

口の中でもごもごと言ったあと、うん、と大きく頷いた。

「骸くんがいいなら、オレは骸くんが牛乳飲めるようになるまで付き合うからさ。
牛乳は大事だよ。骨の素になるしね」

綱吉は下に敷いていたタオルで足をごしごしと擦ると、骸の頭をぽんぽんと撫でてベッドを下りた。

「今日も一緒に寝てくれますか?」

綱吉が部屋の扉を開くと、廊下の眩しい光が部屋に差し込んだ。
窓のカーテンがせわしなくはためく。
振り返った綱吉は、にっこり笑った。

「もちろん!着替えてくるからちょっと待っててね」

骸は笑ってこくんと頷いた。

扉がゆっくり閉じていく。

顔を照らしていた廊下の光は遮断されて、骸の笑顔はすとんと消えた。

(…簡単だな)

腕に伝った液体に赤い舌を伸ばし難なく舐め、綱吉が出て行った扉を目だけで見遣った。

(母親など恋しいと思ったことは一度もないが)

綱吉が座っていたタオルに指先を滑らせる。

(それで彼が言うことを聞くならそれでいい)

ベッドの淵に座ると、足はまだ床に届かない。骸は足をぶらぶらと揺らした。

(この調子なら体の関係に持っていくのも簡単そうだ)

少し考えるように顔を上げると、風でカーテンが揺れて、骸の紺色の髪も揺らした。
赤い瞳を持つ右目の淵の傷跡が、ぼんやりと月明かりに浮かぶ。

(けれど今すぐには無理だ。それまでは彼に近づく人間を排除する必要がありますね…)

風が止むとカーテンが閉じて、また部屋に薄闇を落とす。

骸は足を揺らして、自分の小さな手を見た。

この手ではまだ彼に触れられない。

骸はため息のように顔を上げた。

(早く大人になりたい)




12.10.13
フライングでつな誕…ぜんぜん関係ないですが^^
愛だけは今も変わらずもりもりしてますv
たぶん、骸が15歳くらいになったらつなたん食べられちゃうと思います☆彡