「目を閉じて」
綱吉は躊躇わず瞼を落とした。閉じた瞼の上にするりと布が滑り、頭の後ろで結ばれる。目に少しだけ圧がかかる。どこへ、とは問わなかった。
暗闇の中、車が走り出す。
骸が運転しているのか、それとも他に誰かいるのかは、気配だけでは分からなかった。けれど綱吉は膝の上できつく手を握ったまま、何も言わない。
どれだけ走ったのかも分からず、振動に少し酔い始めた時停車した。
扉が開き、変わらない雨の匂いと一緒に腕を引かれた。感覚もなく手探りでシートの上を滑ると、一気に強く引かれた。その力に任せるとふわりと体が宙に浮く。
「わ!」
思わず声を上げると、骸が一瞬動きを止めたのが分かった。けれどすぐに歩き出す。前屈みの圧力は、どうやら骸の肩に背負われているようだ。骸は華奢に見えて結構力が強いよな、とか、それでも自分は抱えられてしまう程度の体つきなのだろうかとか、現実逃避のように余計な事を少し思った。
鍵穴に差し込まれる鍵の音がやけに響いて、ゆっくりと扉が開く音がした。また少し歩いて、床に下ろされる。大した時間は経っていないはずだけど、足元がふわふわして覚束なかった。骸の手が伸びてするりと目隠しの布を解かれる。
古びたアパートの室内は月明かりだけで照らされていて、真ん中に大きなベッドがぽつんと置いてあった。見渡そうとすると掌でその視線を遮られる。そのまま骸に視線を向けると、じっと綱吉を見据えていた。綱吉は瞳を見詰め返したけれど、何も言わなかった。
「こっちですよ、ボンゴレ」
骸はベッドの前に立ち、大袈裟に振り返る。白いシーツの影に首輪が見えた。綱吉は静かに瞳を揺らした。それに気付いた骸がゆったりとした動作で首輪を持ち上げると、その先には太い鎖が連なっていた。それでも綱吉は骸に歩み寄った。骸はふと笑う。
「さあ、どうぞ」
わざとらしく恭しく言って骸は首輪のベルトを外すと、綱吉の首に巻き付けた。綱吉は一度瞼を落としてから、睫毛を持ち上げ骸を見上げた。
「…逃げない」
「分かっています」
骸は当たり前のように言ってから、くと笑う。
「逃げない為にこの首輪をすると思いますか? そういう事じゃない」
言いながら骸は、まるで抱き締めるように綱吉に首輪を嵌めた。
「今からお前は僕の所有物だ。沢田綱吉」
骸が笑った。綱吉はゆっくり瞼を落とし、頷いた