深い深い夜の海のようなインディゴのシーツの上を、
白く華奢な足が泳いだ。
すいー、すいー、とまるで歩いているようで、
途中ブランケットに絡まって動きを止めてしまったので
骸は罠に掛かってしまった魚を逃がすような丁寧な手付きで細い足を解放した。
途端に何事もなかったように足が滑る。
骸は堪らずくす、と笑って枕に頬を付けると、正面から眠っている綱吉の顔を見詰めた。
色々試した結果、綱吉の肌の色が一番映える色がインディゴブルーだと分かった時の嬉しさと言ったらなかった。
(己の纏う炎の色と同じだなんて、なんて運命的なのだろう!)
それからというもの、まだ一緒に住んでいなかった頃から骸の寝室も綱吉の寝室も
インディゴブルーで統一していた。
綱吉はと言えば、そういったことにこだわりのないタイプの人間なのと
呆れも手伝って骸の好きにさせていた。
すいー、とシーツの上を足が滑る。
綱吉の足がこういう動きをしているときは、大抵夢の中で走っている。
ときには巨大なオニオンリングから逃げ、ときには巨大なクマのぬぐるみから逃げ、
とにかく巨大で食べ物か、巨大でファンシーなものから逃げている。
トラウマか、はたまたストレスか。
どちらでもあるのだろうけど、骸は前者だと睨んでいる。
食が細くて体も細いのを気にしているし(幼少の頃、それで色々あったのを知っている)、
やはり幼少の頃、よく女の子に間違えられていたことを今でも気にしている。
そのトラウマから逃げるように、
決して怖く見えない巨大な何かから必死に逃げている綱吉の姿を見るのが好きでもある。
頑張れと心底応援したくなるし、何より楽しい。
だってシュール過ぎる。
そして傍観している骸を見付けたときの綱吉の反応が大好きなのだ。
「見てないで助けろよ!」
ごもっともだ。
けれども骸は助けない。
嬉々として走り出し、綱吉の手を取ってこう言う。
「一緒に逃げましょう!」
そして綱吉のぐったりとした表情が可愛くて仕方なくて、
「起きたら覚えてろよ!」と怖くない脅し文句とともに握られる手の力の強さが大好きだった。
信頼されている力の強さが、大好きなのだ。
何かの拍子に夢が壊れたとき、夢の中なのに綱吉は息を切らせて
「何で隣に寝てる奴が同じ夢の中にいるんだろう。」とぐったりと
これもまたごもっともなことを言ってくれて、
そして決まって
「でも怖い夢でも骸がいるなら、楽しい。」
そう言ってへらっと笑うんだ。
嬉しい。うれしい。
眠っている綱吉の頬を手で包み込むと綱吉はへらっと笑った。
骸がぱちりと瞬きをする間に口角はゆるゆると下がっていった。
鼻先をちろっと舐めると、綱吉はまたへらっと笑った。
いい夢を見ているのかもしれない。
いい夢なら入っていく必要はないけどでも、
素敵な夢の中に入って行ったら、もっと素敵な夢になったって、言ってくれるかな。
この人なら、言ってくれるだろうな。
綱吉が擦り寄ってきたから、骸はくすくす笑って綱吉を抱き締めた。
やっぱり夢の中でも会いたいから、入って行ってしまおう。
緩やかな呼吸を繰り返す唇にキスをしてから、額を合わせて瞼を落とした。
次に目を開けたときは抜けるようないっぱいの青空と真っ白い雲と、インディゴの海。
何て綺麗な世界だろう!
「骸!」
呼ばれるままに振り返れば綱吉が息を弾ませて、目一杯の笑顔で駆け寄って来ている。
「探してたんだ!来ると思ってた!」
だから走っていたの。
骸は綱吉と同じくらい目一杯の笑顔で、綱吉を抱き締めるために、その両腕を広げた。
09.12.31
24時間365日いっちゃいちゃむっくむくつっなつなしていればいいと思いますvvv
夢の中でもいちゃつけるのは骸ツナの特権ですねv