骸は会員制のホテルに綱吉を連れて行った。
会員制だから色々都合がいいのでたまに使っている。

誰でも会員になれるような場所ではないのでドレスコードがある。
ジーンズはもちろんNGだ。

なので途中で骸がたまに行く店でスーツを揃えてやった。
まぁ悪くない。

その代金も払うと言ってなかなか聞かないので、
値段を言うと青褪めたのがまたおかしかった。

部屋に入ると壁一面のパノラマの窓に、綱吉はぽかんと口を開けておお、と呟いた。

そんな反応が骸には新鮮だったりもする。

「荷物はその辺に適当に置いてください。飲みますか?」

ジャケットをソファに放ってワインのボトルを取る。

「あ、あの少しだけ・・・」

大きなワイングラスを受け取ると、少し飲みにくそうにしながら
ほんの少し口に含んだ。

骸はそんな綱吉を眺めながらグラスの縁に唇を付けて、少し笑う。

「ワインの味とかよく分からないんですけど、でもこれは飲みやすいです・・・」

「それくらい分かれば十分ですよ。」


綱吉はじわと頬を染めて俯いた。


「・・・。」


赤い頬を見て骸は少し気が変わった。


「あ、あの、それで俺は何をすれば・・・掃除とかですか・・・?」

骸は一人掛けのソファに座ると、その長い足を組んだ。

「窓に背を向けて立ってください。」

「あ、はい!」

大きな窓を背に、言われた通りに立つ。

「服を脱いでください。」

「はい!」

綱吉はなんの疑問も持たなかったようで、ジャケットに手を掛けた。

「ああ、そうではなくて、もっとゆっくり。」

「ゆっくり、ですか?」

「ええ。シャツも脱いでください。服はそのまま床に落として構いませんので。」

「はい。」

綱吉は躊躇わず、言われた通りにゆっくりとジャケットを腕に滑らせて床に落とした。
 
続けて淡いストライプのシャツが腕から滑り落ちて、ぱさりと小さな音を立てた。

「脱ぎました。」

「下もですよ。」

ほんの少し恥じらいを乗せた大きな瞳が瞬きをしてから
みるみる見開かれていって、その頬も赤くする。

「ししし下もですか・・・!?!?」

「下もです。下着もぜんぶ。」

平然と言ってのけると、綱吉の細い喉が小さく震えた。

「脱げませんか?」

責めるでもない淡々とした声に、それでも綱吉は小さく首を振った。

骸は何も言わずにただじっと綱吉を見詰めている。

無言の圧力に負けたのか綱吉は「脱ぎます・・・!」と言った。

苛められて脱がされた事でもあるのだろうか。
随分潔い。
でももしかしたら苛められている事すら気付かないかのしれない。
綱吉のこの性格ならあり得る。

骸は少し笑ってしまうが、綱吉は眉尻を下げて頬を赤くしたままで気付いていなかった。

綱吉は指をそっとベルトに掛けた。

微かな金属の擦れる音を響かせて、スラックスがぱさりと下に落ちる。

綱吉は頬を染めてから、下着も床に落とした。


思った通りと言うべきか、その体は華奢だった。


色の白い肌を傾いた陽の橙が緩やかに染め上げて、
綱吉は目を伏せてしゃがむと、言われる前に革靴を脱ぎ落とした。

靴下から細い爪先が控えめに姿を現す。

丸まった背中の、浮いた背骨に影が出来る。


骸は目を細めた。


本当は退屈しのぎにからかって遊ぼうと思っただけだし
借金を帳消しにする気もなかったし、ましてやこんな事をする気なんてなかったけれど。


「沢田くん。」

はっと顔を上げた綱吉に手招きをする。

服を取ろうとしたので、骸はそれを手で制した。

「そのまま、ここまで来てください。」

綱吉は何も言わずに恥ずかしそうに視線を落とすと
緩やかに立ち上がった。

足を前に出すたびに白い肌に影が動く。

夕日が肌にてらりと反射する。

綺麗な肌だな、と思った。

触れられた事はあるのだろうかと、そんな事も気になった。

骸は組んでいた足を床に下ろすと、足の間を指し示した。

「ここに座って。」

「・・・はい、」

綱吉は骸の足の間に裸のまま正座をした。

恥ずかしいからか腕を内側に入れて腿の間に挟み局部を隠しているが
かえっていやらしく見える。

羞恥に赤くなった頬がいい。

「舐めてください。」

眉尻を下げてうろうろ彷徨わせていた瞳を、きょとんと瞬かせて綱吉は骸を見上げた。

その行為を知らないとまでは思わないが、
言っている意味を理解出来ていないのだろう。

だって骸だって、綱吉の赤く染まる頬を、恥じらいに伏せられる睫毛を見るまで
男に向ってこんな事を言う日が来るとは夢にも思わなかったのだから。

けれど仕事でしか使わないこんな場所に連れ込んだ時点で、どこかで気に入ってたのかもしれない。

骸は長い指で自分のベルトをとんとんと叩いた。

「外して。」

「はい、」

何をさせようとしているかまるで分かっていないのだろう。
綱吉は素直に骸のベルトを外した。

「釦も外してください。」

言われるままにスラックスの釦を外すのを見てから、骸はもう一度言った。

「舐めてください。」

さすがに綱吉も意味を理解したようで、大きな目を更に大きく見開いてから
かぁ、と一気に頬を更に赤くした。

「なぁ・・・!?!?そ、そそういうのは俺なんかじゃなくて、女のひとに」

「君に言ってます。」

はっきりと言い切ると、綱吉の瞳が揺れた。

骸は更に言葉を続ける。

「セックスをした事はありますか?」

目が零れ落ちそうなほど見開いて、耳の先まで赤くなって
わたわたする綱吉を見ると、やっぱりうずうずしてくる。

綱吉は恥ずかしそうに俯いて「・・・ありません」と呟いた。

骸は思わず口元を緩めた。

「こうした行為をした事はまるでないという事ですか?」

綱吉はますます俯いて、とても恥ずかしそうにとても小さな声で呟いた。

「・・・まったく、ないです・・・」

何だろう、思った以上に嬉しい。

目の前に晒されるこの肌に誰も触れた事がないのかと思うと
ニヤニヤしてしまう。

骸はニヤニヤしてしまう口元を隠すように片手で覆って、可能な限り平静な声を出した。

「ほら、早く。」

促すと、綱吉の白い喉が小さく震えた。
堪らない。

拒んでも聞き届ける気はなかったが、綱吉は控え目に手を伸ばすと
下着をそっとずらした。


そしてその喉元がまた揺れる。


骸は自分で笑ってしまいそうになった。
だって骸のそれは興奮を示して勃ち上がっていたから。

綱吉は骸が促す前に、おずおずと顔を寄せて舌を伸ばした。


じわりと舌先の熱が伝わってくる。


技術も何もないからただそっと舐めているだけで
正直、くすぐったいだけだった。


けれど、その気になれば吐精出来そうだった。


肉体ではなく、精神的に十分な快楽を得ているのは自分でも分かった。

頬を赤く熟れさせて瞳を閉じ、懸命に舌を這わせる姿はくるものがある。

やっぱりうずうずしてきて、「下手ですねぇ」としみじみと呟いてみた。

綱吉は頬を赤くしたまま慌てて顔を外した。

「す、すみません・・・!」

骸は綱吉の後頭部に手を当てて留めると、親指の腹で赤い頬を撫でた。
ふにふにしていて気持ちいい。

「経験がないなら下手でも仕方ないですけどね。気持ちはいいですよ。」

ひよひよしていた髪に指を絡めると、綱吉は目を伏せたまま何度も瞬きをして
思いがけずそっと指に顔を寄せた。

「?触られるのが好きですか?」

唾液で濡れた小さな唇が、小さく呟く。

「・・・優しいな、って・・・思って・・・」

この状況の何が優しいのだと思う前に、綱吉は自ら骸の足の間に顔を寄せる。
赤い頬。じわりと滲む目元を伏せた。


骸は思わず息を詰めた。


もうさっきからずっとずっと思ってたけど、そういう態度が勘違いしそうになるんだ。
いや待て、何を勘違いすると言うのだ。
綱吉といると自分がよく分からなくなる。

骸は誤魔化すように綱吉の後頭部に指を差し入れた。

「そのまま、咥えてください。」

綱吉は言われるままに恥ずかしそうに小さな口を開いて、先端を口に含む。

「歯を立てないようにして吸って、」

ちゅ、ちゅ、と控え目に吸う力は弱くてでも、今の骸には十分だった。

ゆっくりと柔らかく綱吉の髪を引き、弱く吸う口元が先端から離れた時に
真っ赤な頬に白濁の液体が散って、濡れた口元に流れていく。
ぎゅっと閉じた睫毛がふるふると震えて、その目元まで白く濡れていく。

堪らない。

「ほら、ちゃんと口で受けてください。」

綱吉は目を閉じたまま感覚を頼りに吐精する先端を口に含んだ。
精液が垂れて流れる喉元を、猫にするように指先でくすぐるように撫でた。

「飲んで。」

何の抵抗もせずに白い喉がこくこくと動く。

骸はぱちりと瞬きをした。

本当に飲んだ。

いや、飲めと言ったから飲んだのだろうけど、本当に飲んだ。


また少し気が変わる。


「うわ・・・!」

綱吉の脇の下に手を差し入れて立たせると、ソファの肘置きをぽんぽんと叩いた。

「ここに膝立ちになってください。」

綱吉は白濁の液体が滴る顔をそのままに盛大に慌てた。

「そそそんな事したら丸見えに・・・っ!!」

「ずっと見えてましたよ。」

おもむろに下肢に視線を向けると、綱吉はうわあ!と体を丸めた。

「変なもの見せてすみません・・・!!」

脱げと言ったのはこっちなのに、と骸はまた笑いを堪えるために口元を手で覆った。

「うわ!」

丸まる綱吉の脇の下に手を差し入れて、強引に持ち上げると
骸を跨ぐように足を開かせてソファに膝立ちにさせた。

「おや。」

視線を落とすと淡い色の茂みの下で、綱吉のそれが緩やかではあるが形を変えていた。

「僕のを舐めて興奮しましたか?」

「いえあのこれは・・・!!」

「これは?」

「う、」

じっと綱吉を見上げると、綱吉は言葉に詰まってうぐうぐしている。
おかしくて仕方なかったから、また口元を手で覆って堪える。

まだうぐうぐしている綱吉のそれを、体を屈めて何の前触れもなく口に含んだ。

頭上でうわあ!!と悲鳴染みた声が上がって思わず口元を緩める。

「あああの・・・!!」

逃げ腰になる細い腰を強引に抱き寄せてじゅ、じゅ、と吸い上げると
口の中で確かな硬さを持っていく。

骸はまた口元を緩めた。

「や、止めてくださ・・・!出、ちゃう・・・!!」

綱吉の言葉を無視して細い腰を前後に動かすと、空気が抜けるような声がした。

じゅう、と少し強く吸いながら綱吉の腰を動かすとうわあ!と声がして
骸の頭を抱え込んだかと思うと、生温かい精液が脈を打つように舌へ広がっていく。

相当不味い。
どろりとしていて生温かくて未だかつて口にした事がないような味だ。

思わず眉を顰めるが、骸に吐き出すという選択肢はなかった。

むしろ飲み込んでみたいという衝動に駆られて、躊躇わず飲み下す。

味で言うなら不味いのに、どういう訳か気分はいい。

先端の割れ目に舌を差し入れてちゅちゅ、と吸うとうう、とぐずるような声が聞こえてきて
飲んだぁ・・・と泣きそうな声がした。

骸はくす、と笑うとそのまま肩に担ぐように綱吉を持ち上げて
寝室まで運ぶと、大きなベットに放り投げた。

「ふぐ・・・っ」

華奢な体がベットの上でバウンドした。

「四つん這いになりなさい。」

「・・・!?!?」

腕組みをして高圧的に綱吉を見下ろす。

「なりなさい。」

「・・・っ!!!」

綱吉は忙しなく瞳を彷徨わせた後、骸に頭を向けて四つん這いになった。

「違います。」

綱吉はびくんと体を引き攣らせた。

「あああの・・・!そんな社長さんに尻向ける真似なんて出来ません・・・!!」

「僕は六道骸です。」

「え・・・!?」

「社長さんではありません。」

不満そうに言ってベットに乗り上げると、綱吉の足を掴み上げて引き摺るように後ろを向かせて
尻の間に舌を這わせた。

「うわあ・・・っ!!止めてください・・・!!汚いから・・・っ!!」

ベットヘッドの方に慌てて逃げ出した綱吉の足首をがしっと掴んでずるずると引き摺って引き寄せると
逃げ出せないように腿に腕を回した。

「き、汚いから・・・!!」

「何を今更。しゃぶり合った仲なのに。」

「・・・っ!!」

ばあ、と頬を一気に染め上げ、逃げるように上掛けに顔を埋めた綱吉に
更に淡々と言葉を続ける。

「それに濡らさなければ入らないでしょう?」

「ぬ、濡ら、入らな・・・!?!?」

「今しているのはセックスですよ。ここで終わる訳がない。」

ばっと顔を上げた綱吉は骸と目が合うとはっと頬を染めて勢い良く顔を上掛けに埋めた。