強く感じる骸の体温に、切なさを孕むような腕の力に、綱吉はただ目を見開いて、
酸素を乞うように呼吸をすることしか出来なかった。
温い風が吹き抜けて、骸が唇を開いた。
「僕と結婚してください。」
世界が回るような錯覚に、綱吉は呼吸を忘れた。
「すぐは無理なのは分かってます。だから、それを前提に」
骸の肩の向こうに見える星空が滲んでいく。
「僕のものになってください。」
少し乱暴な告白はそれでも、喜びに変わるのは容易いことで、綱吉の瞳はゆるゆると水分を孕ませていく。
ぱちりと瞬きをしたら、涙が一筋頬を伝った。
綱吉は骸がそうしてくれたように、勇気を出して骸の背中にそっと、腕を回した。
二人の体温はもうどちらのもか分からないくらい、重なっている。
「・・・そしたら、毎年骸の誕生日が記念日になるな。」
静かに離れた体温に少し寂しさを覚えて、でも骸の白くて長い指先が、そっと柔らかく、綱吉の前髪を分けた。
晒されたおでこに緩い風が吹き付けて、そして、柔らかな唇がそっと触れる。
骸がおでこに優しいキスをくれた。
また抱き締めて、大切にします、なんて。
柄にもない台詞はとても優しい声で囁かれた。
とうとう涙がぽろぽろと落ちてきた。
「むくろ・・・うれしい、」
泣くのを許してくれるような掌が背中に添えられて、綱吉は嬉しくて声を出して泣いた。
ぶえええええと色気のない声でも骸は、綱吉が泣き止むまでずっと、抱き締めてくれていた。
骸のシャツの肩の部分がびしょびしょになってしまったことが大変申し訳なかった。
「送ります。」
「う、うん・・・ありがと、」
骸のシャツに鼻水付いてなければいいなぁと淡い願いを抱きつつ、綱吉は手の甲で鼻を拭った。
いつものようにすたすたと歩いて行った骸はふと振り返った。
不思議そうにしている綱吉の前に、手が差し出される。
「またいなくなると面倒なので。」
「うう、うん・・・!」
どきどきとして、そっと重ねた掌は、離れない強さで握られた。
じんわりと頬が染まる。
「押し入れじゃないよな?」
「だから何なんですかそれ。」
それでも前を歩くような骸に引っ張られるようにして、綱吉は骸の背中を見詰めた。
いつも怖いけど、根っこの部分が優しいのを知っている。
強くて頼りになる背中、この先もきっとずっとこうして手を繋いで生きて行くんだ。
こうして手を繋いで、同じ家に帰るんだ。それはきっと、遠くない未来。
「ふへへへへ」
思わず漏らした笑い声に、骸がきっと後ろを振り返ったので綱吉はびくっと体を引き攣らせた。