客×花魁パラレル
綱吉襲い受け表現、性描写アリ
宵になれば行燈に橙の火が灯る。
艶やかな朱塗りの遊郭の町並みは今日も
零れる笑い声と酒の匂いと誘う声でざわめきたって
どこからともなく聞こえてくる楽の音は遠い。
「おや骸の旦那。今日はお連れはいないのですか?」
子猫のような声で白塗りの女が体をしならせる。
「随分と盛り上がっていたようなので皆、置いて来ましたよ。」
「それなら旦那は贔屓の姐さんの所にでも行くんですか?」
絡み付く白い腕を避けもせずに骸の旦那、は色違いの目を楽しそうに細めた。
「生憎贔屓はいないのですよ。」
本当に薄情ですねぇと呆れた甘い声を出し、
女は広い胸元に顔を寄せてしな垂れ掛かる。
「そんなに薄情な事ばかりしていると、終いには刺されてしまいますよ?」
宵に照らされる人形のように端正な顔はさも当たり前のように微笑んで
女のふくよかな背に手を滑らせた。
「刺されてしまうほど、情を交わした覚えもないですねぇ。」
ああ本当に薄情だ、と女は愉しそうに笑った。
「ところで、あれは?」
一際大きな朱塗りの格子に人だかりが出来ていて、
通り過ぎる人をも巻き込み、華やかさが零れていた。
「ああ、旦那はこちらまで来る事はほとんどありませんものね。
随分前に出来た新しい遊郭ですよ。あそこは少し変わっていてね、男の花魁を置いているんですよ。」
「男?」
骸は怪訝な顔で柳眉を潜めて人だかりに目を向けた。
「それでも随分流行ってましてね。ほら、またお客が入って行った。
あそこは気立てのいい子が多いから。」
「気立てがいいからと言って、男でしょう?男を買う気が知れませんね。」
「まぁそれは人の好きずきでしょう。」
くす、と笑って女は骸の腕を離れて行った。
「私は泣くのはご免なので、さようなら旦那。」
骸はくすと笑って女を追う事もしないで足を進めた。
宵の色の長い髪を靡かせて、ほんの好奇心でなんとなく格子を眺めた。
人だかりの隙間から、女のような華美な着物に身を包んだ「売りもの」が目に入る。
真赤の敷物にくすんだ煙管の煙が滲んで行燈の光は一際淫媚に視覚をくすぐる。
店に入る男をああ下らないと呆れた視線で追い遣って、
ふと視界に飴色が入り込む。
こちらに背中を向けた短い髪の飴色は深い青に大きな白い花の着物を着崩し、
惜し気もなく真赤の襦袢を人目に晒し、指に挟んだ煙管と共にゆったりと振り返った。
耳の横には大きな菊のかんざしが、白い肌に零れた大きな飴色の瞳の際には朱が走り
憂いを帯びたような伏せられた長い睫毛が柔らかく揺れた。
骸は瞬きも忘れてゆったりと流れるその光景に魅入られた。
色違いの瞳を捕えた飴色の瞳が柔らかくしなり、
淡く桃の色に濡れた唇がふと楽しげに弧を描いた。
飴色は格子に擦り寄るように体をしならせゆったりと立ち上がると
しなやかに小首を傾げた。
菊のかんざしから垂れ下がる華奢な金色の花びら細工がしゃら、と音を立てた。
格子の隙間からすらりと伸びてきた白い腕は甘えるように宙を撫でて
やがてほっそりとした指が骸の顎をくすぐるように滑った。
「ねぇ、旦那。俺と遊んで行かない?」
顎をくすぐった指はやがて胸元に滑っていった。
部屋に入るなり唇を合わせようと華奢な腰を抱き寄せるが
重なる直前に細い指が差し入れられて、唇を押し留める。
「ごめんね旦那。俺のここは売りものじゃないんだ。」
しなやかに身を翻した勝気な瞳の色と笑う桃の唇に
骸は愉しそうに目を細めた。
腰を下ろした骸の目の前に白い足が零れ出て、つい、と畳を滑った後に
誘うように骸の膝の上に乗せられた。
くすと笑って華奢な足を掴み上げて、遠慮もなく手を滑らせた。
「随分と、綺麗な足をしていますね。」
「これでも一応手入れはしてるんだよ。」
商売道具だからね、と笑って内腿を滑る手から逃れるように足を引いて
畳に手を付くと猫のように体をしならせて骸にすと寄って行く。
大きく開けられた胸元の華奢な鎖骨が色を含む。
「男を抱くのは初めてかい?」
乗り上げるようにして骸を押し倒すと躊躇いもなくその体に跨った。
「ええ。そういった趣味はないもので。」
飴色はくす、と笑う。
「そうかい。でも大丈夫だよ。俺がぜんぶしてあげるから。」
言って大胆に帯を解き、現れた下帯が青の着物に食い込む様までも卑猥に見える。
骸の胸元も大きく開いてしなやかに掌が骸の胸を滑る。
いい体してるね、と目を細めて呟やくから、
掌が皮膚を薄く滑るだけなのに背筋がそわりそわりと乱れる。
何かに気付いたように飴色の瞳が持ち上がって、くす、と楽しそうに笑って
後ろ手につ、と骸のそれに指先を滑らせた。
「心配ないみたいだね。もうこんなにして・・・」
すでに熱く立ち上がった骸のそれを布越しに指でたどる。
「本当にそっちの趣味はないの?」
「ええ、全く。」
「それなら旦那は物好きだね。俺の体なんかに欲情してさ。」
平たい胸も、女の華奢さとは違う細さも、露わになった肢体の筋肉の線も
それだけ見たなら欲情するには足りない。
それはすなわち、
「君の体、と言うよりは、君、に欲情しています。」
その飴色の瞳に感情が宿るたび、濡れる唇が微笑むたび、
どこか憂いを帯びる長い睫毛が揺れるたびに、
平たい胸にも華奢な肢体にも欲望の火が灯る。
「それならもっと物好きだね。」
楽しそうに笑った目元が仄かに赤味を帯びたのが堪らなくいい。
体を這わせるようにして骸の胸の先端を唇で挟み込んで舌を這わせて甘く噛む。
舌先は迷う事なく腹に下がっていき、強く欲望を乗せた骸のそれに辿り着く。
不意に上体を起こした骸を飴色の瞳が不思議そうに見上げた。
「どんな顔でするのか見てみたくて。」
ほっそりとした首から顎を、まるで猫でも撫でるようにして微笑むと、
飴色の瞳もぱちぱちと瞬きをしてからふわと笑った。
「いやらしいね、旦那。」
頬を染めてくすくすと笑うその空気の振動でさえ快楽へと結び付いてしまう。
瞳を伏せて舌を這わせるその顔を行燈の火が照らす。
粘膜をてらりと光らせて懸命に舌を這わせる健気な姿はいっそ抱き潰したくもなる。
くびれに舌を這わせてから赤い頬をそのままにああこんなの入るかな、とひとりごちた声は甘く
これからこの華奢な体の中に自身の体を埋めるのかと思うと酷く興奮する。
丁寧な愛撫もそこそこに、飴色は小瓶を取り出すと潤滑油を掌に落とした。
掌で温めるように擦り合わせてから、骸のそれを両手で包むように塗った。
「慣れないだろ?ごめんね、少し我慢してね。」
再び骸を押し倒すと、すっと骸の上に体を重ねた。
そして頬を寄せて囁く。
「すぐ、悦くなるから・・・」
鼻先が触れそうな距離で目を合わせて目を細めて笑い合う。
きつく勃ち上がる骸のそれに弾力のある後孔が柔らかく押し付けられる。
背を反らせて腰を進めていく飴色の頬は更に上気して、
その桃色の唇から濡れた吐息が短く溢れ続ける。
先端をぬるりと飲み込み始めて、その熱さに骸も思わず息を詰めた。
まるで鼓動を刻むように波打つ中を、先端で割るようにして奥へと入っていく。
切なく眉を寄せるその顔を、骸は息を詰めながらも凝視していた。
骸のそれに添えていた手をそっと離すと、最後は体を乗せるようにして
くん、とすべてを体の中に納めてしまう。
ん、と短い声が漏れる。
熱を孕んだ瞳がゆったりと開いた。
「凄い、ね・・・」
はぁ、と吐息混じりに呟かれるから堪らない。
「君も、凄いですよ・・・」
「・・・痛くない?」
痛いどころか凄く悦い。
「全く・・・」
骸は珍しく余裕がないかもしれない、と心の中で苦笑した。
「そう、よかった・・・」
はぁ、と熱い息を吐いて、熱に濡れた瞳を伏せ骸の腹に手を付くと
その華奢な腰を緩やかに揺らめかせた。
露わになった仄かに上気する肢体を掌で包み込むように撫で上げて
足の付け根に手を滑り込ませると、その手を柔らかく握られて止められる。
「俺はいいんだよ。旦那が悦くなってくれさえしたら・・・」
言って骸の手を握った飴色は不意にん、と鼻に抜ける声を漏らし、
ゆったりと瞼を上げて濡れた瞳を揺らめかせると「旦那、」と些か咎めるような声を出した。
「君が興奮させるからですよ。」
中で質量を増した骸のそれに再びはぁ、と熱い息を吐き、そして腰を波打たせた。
あ、あ、と上がる声は短く切なく途切れて
仰け反って露わになった白い首が艶めかしい呼吸を繰り返す。
その体が波打つたびにかんざしの金細工がしゃらしゃらと切ない音を立てる。
骸は瞬きも忘れて仄かな灯に陰影を作るその体を表情を見据えた。
滅茶苦茶に攻め立ててぐちゃぐちゃに乱れさせたい衝動にも駆られる。
自分の体の下で乱れる彼もまた、艶やかで淫媚で、とても綺麗なのだろう。
けれど朝までまだ時間はある。
今は腹の上で健気にも淫らに腰を波打たせる彼を堪能するのもいい。
握られていた手を逆に握り返し、もう一方の手も片手で纏めて握り込んでしまう。
「・・・?あ・・・っ!!」
不思議そうに濡れた目を薄く開いたのも束の間、飴色の瞳は大きく見開かれ
がくんと背中を仰け反らせた。
骸は熱い中をず、ず、と大きく何度も突き上げた。
「ああああ・・・!!!」
切ない声を上げる体の足の付け根に空いている手を滑り込ませて
熱くなっているそれを探り当てて握り込むと、華奢な体が一層びくんと引き攣った。
じゅぐじゅぐと音を立てながら中を激しく突き上げて
握り込んだそれを器用に扱く。
「ああ・・・っ!!旦那・・・っだめ、」
「君がもっと悦くなれば、僕ももっともっと悦くなります。」
「ああああ・・・・っ」
声の終わりを切なく掠れさせて、華奢な体を引き攣らせると
骸の腹の上に熱い体液が飛び散った。
切なく眉根を寄せて体を仰け反らせた飴色に、骸は満足そうに笑み
その端正な顔にまで届いた体液を舌で舐め取った。
射精に伴って二度目に中がきつく締まり上がった時に
さすがに骸も堪え切れずにその熱い中に体液を吐き出した。
飲み干すように中が波打って、喉を震わせた飴色に
早くも次の欲望が頭をもたげた。
それでも余韻に呼吸を乱し、慈しむように華奢な腰に手を這わせた時、
ぱたた、と胸に落ちて来た雫に、骸は目を見張った。
見上げれば飴色の瞳をきつく閉じて眉根を寄せ、悲しげに涙を零している。
魅入られるようにまだ赤く染まる頬を両手で包み、零れてくる涙を親指の腹で擦った。